第5章 出会いと再会【原作編(入学)】
手を挙げてそう言い放つ理央ちゃんに思わずクラスの注目が私に移る。
『わ、私?』
まさか推薦されるとは思わずつい自分を指していた。
「一条さん?」
「うーんいいけど、大丈夫かな?」
「そもそも、リーダー向いてるのかな?」
「無個性でもなっていいのこれ?」
「え、一条さん「無個性」なの?」
様々なクラスの意見に思わず身が固まる。確かに学級委員長に選ばれる人は、しっかりしていて皆を引っ張っていくというのがイメージがある。私みたいな人間とマッチしているかと言えば微妙だ。それに私は「無個性」という特殊な立場でもあるし、やはりここは皆の意見を尊重して、
『…えっと、クラスの皆が納得できないなら、それで「いいじゃん、無個性でもなんでも」
自分が言い終える前に、彼女は追いかぶせながら私を見ていた。
「ていうか、やる気なかった癖に今更そういう態度ってないんじゃないの?」
クラスの皆に聞こえるように彼女はそう話すと、困惑したような反応を見せた。しかし、
「いいんじゃねぇの」
静かに聞いているだけだった心操くんが口を開いていた。
「一条だったら、真面目にやってくれそうだし、それに別に最初から出来るやつなんていないだろ。」
彼の言葉には温かさが感じられた。その雰囲気にクラス皆の気持ちも引っ張られていた。
「はい、じゃあ一条さん異論はありますか?」
先生の言葉に、しばらく考えて自分に下した判断を伝えた。
『選ばれたからには精一杯頑張ります。よろしくお願いします。』
こうして私は普通科の学級委員長になった。自分でやれることを頑張ろう。
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『もう、急に推薦されてびっくりしたよ』
「まあ強引だったことは認めるよ。でも、私はアンタが学級委員長の方がいいって思ったから」
『ありがとう』
「ん?」
自分が無個性だとしても普通に接してくれるこれがどれだけ救われることなのか、彼女は知らないだろう。でも改めてお礼したい。それは近くでご飯を食べてる彼も同じだった。
『心操くんもありがとう』
「…おう」
「何?心操いたの?」
「いちゃ悪いかよ」
彼らの様子を見ながら、こうやって気軽に話せる人と楽しい時間をいっぱい作っていきたいと改めて思う。そして、いずれ…
「彼」の存在も、未練ではない「素敵な思い出」になっていけますようにと願う。