第5章 出会いと再会【原作編(入学)】
数日後、英語の授業の際に英会話の練習のため、近いの人同士ペアで組む事になり、偶然にも心操君とペアになっていた。
『‥‥』
「‥‥」
重い空気だ。教材の練習会話が早めに終わってしまい、しばらく無言が続いていた。そういえば、たまたま食堂で彼を見かけた時も、じっと自分を見つめていた気がする。覚えてないだけで、何か彼に悪い事をしたのだろうか
『あの、』
「‥‥なんだよ」
『あ、いや、勘違いなら申し訳ないんだけど、なんか私悪い事したのかなと』
思い当たることはなくても、傍からみたら生理的に受け付けられない、そういった部分が自分にはある事はよくわかってる。やっぱり自分の「無個性」という点なのだろうか、まあそういう人もいるのは経験上仕方ないのだが、
『無個性だから気に食わないかもしれないけど、もうすぐ時間も終わるから、』
「いや、そういうわけじゃねぇけど…アンタ無個性だったの」
『え、それで見られてたんじゃ…』
彼の言い草からそもそも私が「無個性」と知らなかったみたいだ。じゃあなんだろう
「…いや、特に意味はない。珍しい雰囲気だったから見てただけで」
『あ、そうなんだ…よ、よかった、…珍しい?』
どういう風に映ったら珍しい事になるのだろうか、少し緊張する。
「俺もそうだけど、大概ヒーロー科に落ちた連中は嫌な想いでこのクラスにいるからな、お前みたいに普通にしているヤツは珍しい」
『それは…』
普通とは何なんだという話ではあるが、ヒーロー科を目指して落ちて普通科に入る人と、普通科を目指して入る人とは全然目的意識も違うんだろうなと思った。
「滑稽に見えるだろうな、お前からしたら俺は」
それは彼の事を言ってるのだろうか、今の彼は何かと彼自身に言い聞かせてるような、皮肉めいている発言のように聞こえた。滑稽だなんて、そんな、
『そんなことないよ。』
それは自然と言えた言葉だった。
『ヒーロー科に受かるために頑張ったんでしょ?その気持ちを滑稽だなんて思わないよ。』
「......」
『それに心操くんの個性って「洗脳」でしょ?個性のない私からすれば、充分強力になり得る素晴らしい個性だと思うけど…』
「お前....「はい!!そこまで!」
彼の続きを言う前に、先生の合図で話は終わってしまった。