第5章 出会いと再会【原作編(入学)】
あの時、整理できたと思っていた気持ちは、どうやら解消できなかったみたいだ。受験の時は、忙しくて考える暇もなかったが、こうしてある程度学校でのルーティンが続いてくと、徐々に自分の奥の気持ちに向き合う余裕ができてしまった。
(諦めないと…)
自己暗示みたいにそう言い聞かせる。諦めると決めたのに、このままじゃ何も進めない。どうしたら、いいんだろうかと思い至る。
「地雷踏んだ?」
『いや、その…、聞いてもらってもいいかな』
これは他の人の意見を聞いてみた方がいいかもしれないと、思い、彼女に相談した。出会って間もないのに恋愛相談とかぶっ飛んではいるが、こればっかりは自分一人ではどうすることもできないからだ。詳しく話していると、彼女はじっと私の方を見つめていた。
「他の男作ればいいんだよ」
『っぶ!!!』
思わず、飲んでいた水を吐き出しそうになってしまい、口で押える。
『他の男って…』
「そりゃそのままの意味。他に好きな男の子を作ればいいってこと」
『そんな無茶な…』
確かに長年の気持ちを諦めるには、そうすることが手っ取り早いとは思うけど、でも…
『そもそも、こんな私を好きになってくれる人なんていないと思うし‥…』
「いやいや、自己否定が過ぎるでしょ、それか、試しに他の男子と付き合ってみるとか、そこから恋愛に発展するかもしれないし」
そんな軽い気持ちで付き合っていいのだろうか‥‥と自分は思ってしまうが、そういう考え方もあるのだろう。
「あ、心操」
急に話題が変わり、彼女の視線の先を見ると、顔見知りの人が素通りしようとしていた。同じクラスの…前、ぶつけてしまった人だ。
『こんにちは』
「……」
「あ、普通にスルーしやがった」
チラっと私を見ては、そのまま通り過ぎてしまった。なんだ前回より見られた気がしたのは気のせいか、
『同じクラスの人だよね』
「そうそう、確か「洗脳」の個性持ち。」
『なんか強そうだね。』
「相当ヒーロー科に落ちた事が悔しかったのか、めっちゃ威圧感凄くてさ、話しかけづらいし…あ、」
『ん?』
「…ああいうタイプとかどう?」
『ええ?!』
その話続いていたのか…と思い若干苦笑いを浮かべていた。まあ相談したのは私の方だし、アドバイスとしてありがたく受け止めておこう。