第4章 自覚と決着【過去編】
家に帰ると、おばあちゃんがソファーに横になっているが見えた。
『ただいま』
「ゴホッ、おかえりなさい、」
『おばあちゃん、風邪?』
「ちょっとせき込んだだけよ」
改まって姿勢を変えると、彼女はこちらを向いた。
「それで渡せたの?」
『あ‥‥それが』
今日は伝えられなかったが、改めて伝えられる日を設定した事を話した。すると、
『…これで‥‥ようやく伝えられるよ、』
「沙耶、大丈夫かい?」
『…え?』
私の言葉に彼女は少し心配そうに語り始めた。
「なんだか無理しているように見えたからね。」
使命感、その単語に我ながら反応してしまった。自分では気づいてなかった部分だった。
『そう見えてた?』
「もしかして無自覚?」
つまり、彼女の目には無理してるように見えていたのか、そういわれると確かに、伝えると決心してからの自分は、かなり猪突猛進に進んでいたのかも、
そう思うと、自分らしくはなかったかもしれない。
「自分らしく素直な気持ちを口に出せばいいさ。無理して鼓舞しなくてもいいのよ。」
『!』
まるで自分の悩みや気持ちを理解してくれているように感じられ、安心したのか思わず、気張ってた心が溶けて本音が出ていた。
『‥‥本当は、ね、怖いんだ。』
言葉に出てしまったら、もう止める事ができなかった。
『自分の気持ちを伝えるのは怖くないんだ。でも、その後の事を考えると‥‥どうしても怖くて、』
「‥‥そう、」
『‥‥今までの関係も全部なくなっちゃう気がして、』
関係も、彼との思い出も、お互い別の道に行くことで、少しずつ忘れて消えてしまうんじゃないかという恐怖だった。震える体に彼女が優しく抱きしめてくれた。
「それほど彼が好きだったのね。」
『....!』
不安を包み込むようで、暖かった。
『‥‥うん、‥‥っうん、』
私は温もりに身を任せ、奥底に眠る負の感情を涙で吐き出していた。
個性があれば、気持ちを伝えなくても、貴方の隣に立てれたのだろうか、綺麗で強い女性になればよかったのに、
それが無理ならばせめて、
(‥‥もっと一緒にいたかったな、)
ああ、いつの間に私は、これほど、轟焦凍くんのことが好きになっていたんだろう。
涙で滲む声に、彼女は何も言わずただ優しく頭を撫でてくれた。