第4章 自覚と決着【過去編】
頬もだいぶ落ち着いたみたいで、私は彼に借りたハンカチを返した。
『はい、これありがとう』
「だいぶ落ち着いたな。」
『そうみたい。』
よく見たら、弁当を落とした時に使ったハンカチと同じだったため、気になって聞いてみた。
『これ、いつも持ってるの?綺麗なハンカチだよね』
「…ああ、別に俺のものじゃねぇんだが、」
『そうなんだ、お姉さんの?』
「わからねぇ」
親族からのものかと思ったらそうでもないらしい。ますます謎だ。
「あんまり覚えてねぇんだが、俺が小さい頃に誰かにもらった記憶がある。」
『へぇ、女の子かな?』
「さあな。返すタイミングもなかったから、返せないままだが、」
どの時点でこれをもらったのかわからないが、さぞかし優しい女の子だったのだろう。それはそれで複雑な気分になってしまうは否めないが、
『…返せるといいね。』
どのタイミングでこのハンカチをもらったのかは知らないが、恐らくこのように、高校に入ったら、彼は私の知らない人たちに囲まれ、その中で彼にふさわしい女の子と出会うのだろう。自分の出る幕はない。
だとしたら、なおさら時間があるうちに伝えないといけないと思い、私は深く息を吸って話す。
『あの、』
「‥‥?」
『轟くん、学年末テストが終わったら、話したいことがあるんだけど、いいかな?』
「何かあるのか?」
『…うん、でもすぐ終わる話だから、』
「わかった」
彼は素直に了解してくれた。これで伝える日にちは決定された、後は、自分の心構えのみだ。
『もう到着したね。早い』
「‥‥悪かったな、付き合わせて」
『いや、私が付いていきたいって思っただけだから、』
じゃあね、と彼に挨拶しようとした瞬間、ドアの門が大きな音を立てて開いた。
「焦凍!やっと帰ってきたのか」
門を開けたのは、存在感が圧倒される男性の人だった。ニュースで見かけた事がある。この人がヒーロー「エンデヴァー」なのだと、すぐわかった。
私はただただ恐れ多いままその人を見つめると、横にいる彼が明らかに不機嫌な態度で睨んでいた
「‥‥は?どけ」
そう言って、見向きもせず家の中に入っていってしまった。その最中、エンデヴァーさんと目線があってしまい、軽く会釈するも、特に何も言われる事なく、門は閉じてしまった。
幸せな夢の終わりが見えた。