第4章 自覚と決着【過去編】
教室へ戻り、カバンを背負い、彼の元へたどり着いた。彼は、あまり女子に重い荷物を手伝わされる事に納得がいってない様子だったが、お互い半分個持つことで無理を言って押し通した。
こうやって二人で帰り道を歩くのはあまりないため、何の話をすれば無言が続いてる中、自分から話題を切り出した。
『よ、よかったね、こんなにいっぱいもらって』
「‥‥」
『きっと、女の子たちも喜んでるよ。』
本当は渡せなかった事が悔しいし、女の子たちが渡したチョコも正直目にするのが辛いが、彼の立場からしたらこんなに貰える事は嬉しいんじゃないだろうか、少なくとも
「そういうお前は嬉しくなさそうだけどな」
『どうだろうね、自分はあげる側じゃなかったし、』
あげられなかったという表現が正しいけどね、
しばらく歩いていくと、歩道側に大きい木々たちが見え始める。よく見たら桜のつぼみが後もう少しで膨らもうとしていた。
『もうすぐ春だね。この辺、桜が綺麗に咲くんだよ』
「よく目にするな」
そういえば、入学式の時も綺麗な桜が満開だった。もうその頃から2年という月日が流れている事にしみじみする。彼との再会の日から嘘かのようにあっという間に時間は過ぎていった。
『…轟くんとこうやって話すのも後わずかか~』
思わず心の中で考えた事が前に出てしまい、彼はこっちをじっと見つめてきた。しまった、と思うが矢先、
「別にまだ中学を卒業するわけじゃねぇだろ」
『そうだけど、中3になったらお互い勉強で忙しくなってこんなに穏やかに話す事も少なくなるだろうし』
受験に限らず、もし自分の想いを伝えた後の事を考えると、こうして気楽に話す関係にはもう戻れないだろう。それをわかっていた。
「お前寂しいのか」
『え?…‥そりゃ、ね!轟くんとはいろんな思い出があるから、』
寂しい、図星の言葉すぎて、咄嗟に悟られないように明るく返答する。
『本当はね、感謝をこめてあげたかったんだ。チョコ、』
「用意してたのか、」
『うん、でも、うっかりどっかに落としちゃったみたいなんだよね。残念だけど、』
「‥‥」
『まあ、これもいい経験だよね。』
誰かに持ってかれただなんて、口が裂けてもいえなかった。