第4章 自覚と決着【過去編】
時間を確認するとかなりの時間を消耗してしまった。
『‥‥頑張ったんだけどな、』
虚しさに心が冷えていくのを感じる。小さい頃、母に認めてもらいたくて頑張って、でも結局変わらなった、そんな事いつも経験しているはずなのに、
(…轟くん、もう帰っちゃったかな、)
もうこの時間だし、帰ってしまった可能性は高いだろう。そう思うとますますやるせなさを感じざるを得なかった。
『‥‥もう時間ないのに、』
焦りが押し寄せてきたからか、考えたくない事が頭を占めていく。彼とは後どれぐらい一緒にいられるのか、残された時間、そして振られた後のこと、そんなどうしようもない事ばかり頭に浮かんでしまうのだ。
『‥‥ああ、嫌だな、』
必死で涙を収めようと目元を手で隠す。誰にも見えないうちに、気持ちを整理させないと、
「‥‥お前、」
『え?』
声をかけられ思わず涙も引っ込んでしまった。なんで、どうして、この時間帯なら彼はもう帰ってるはずなのに、
『轟くん、どうして…』
「誰かに殴られたのか、」
たくさんの包装が入っている紙バッグを他所に、珍しく焦ってる彼は私に近づいていた。そういえば、平手打ちを打たれたんだった。
『ち、違うよ‥これは、』
私の顔に触れようと手を伸ばそうとして、一旦止めたかと思えば、彼は右手に氷を作り出し、持っていたハンカチに包んで頬へ押し当てていた。
「赤くなってるぞ」
急な冷たさと彼の手が頬に触れてビックリするが、彼がここにいる事に対しての驚きの方が勝ってしまい、つい聞いてしまった。
『轟くん、もう帰ったのかと思ってた』
「…帰ろうと思ったら、邪魔された。」
彼は目線を紙バッグへ移しているのを見て、理由を察知することができた。なるほど、放課後もたくさんチョコをもらっていたんだ。
『すごいたくさん…』
「正直いらねぇけど、捨てるわけにもいかねぇから持って帰る。」
『え、待って、それなら手伝うよ、』
「お前が手伝っても何も得しねぇだろ。」
確かに轟くんからしたら、意味が分からない行動かもしれない。でも、
『と、とりあえず待ってて』
ハンカチを押し当てながら教室へ行く。チョコを挙げられなかった分、彼のために何か一つでも行動したかった。