第2章 優しい思い出【過去編】
助けてくれた男の子の名前は「轟焦凍」くんであることを、服の名札を見て気づいた。私は自分の名札を見せながら、自分の名前だよと彼に見せた。とりあえず助けてくれた事の感謝を伝えなければ
『しょうと…くん、であってる?』
「うん」
『たすけてくれてありがとう。いまのって個性?』
「そうだよ」
『ねぇねぇ、もう一回みてもいい?』
いつも個性の話になると、無個性の私はハブられる事が多く、実際に見ることはあまりないため、少し興味があった。
「いいよ」
彼は特に何の迷いもなく氷と炎を出すと、改めて本物であることに驚くと同時に、これをまだ幼い年齢でうまく扱えている事に感心していた。そして無個性である自分をより実感してしまった。
『すごくきれい…わたしも個性あったらよかったな』
「個性…ないの?」
『…あっ』
思わず言ってしまった言葉に焦りが生まれる。さっきは偶然助けてもらったが、【無個性】ということを彼に告げていなかった。もしかして距離を置かれるのではと考えると冷や汗と恐怖が止まらない。ただ、このまま私が黙っていたって何も進まないのも明白だった。私は素直に自分の事を話す事にした。
『…こ、個性ないって言ったら…きらいになる?』
聞いてみることは凄く怖い。どう返ってくるのだろう。今までの人たちみたいに変だと思われて離れてしまうのだろうか。恐る恐る視線を彼に向けた。
「なんでそうなるの?」
『え?』
私の問いが理解できないなかったみたいで、ただ首をかしげてくる彼がいた。特に何も反応しない事に思わずびっくりしていた。
『ヘンだと思わない?…離れたり、しない?』
「たしかに驚いたけど、だからってきらいになったり離れたりしないよ」
『ほんとう…?』
「うん」
彼にとっては、それが当たり前だったのかもしれない。でも自分は、普通に会話してくれる状況がとても嬉しかった。まるでそこに、自分がいてもいいような気がしたからだ。
『こ、これからもおはなししてもいい?』
「…時間があればいつでも」
『や、やった!うれしい』
その時から彼の姿を目で追うようになった。