第4章 自覚と決着【過去編】
精一杯作った生チョコが入った袋をカバンに入れ、学校へ進む。学校へ到着して教室に入ると、袋を持った女子生徒たちが男子の机に置いていった。
その中でも一際賑わっていたのは…
「轟くん、受け取って~」
「.....」
「きゃー 受け取ってもらっちゃった~!!」
たくさんの女性生徒が彼の周囲を囲み、包装されたチョコを渡しているのを見かけていた。なぜかこっちも緊張してきた。
「.....」
淡々と受け取ってはいるものの、たくさんの女性生徒に囲まれて彼の顔は疲れている様子だった。流石に今は彼を休ませてあげよう。
私は、放課後にチョコを渡す事にした。
『ふぅ‥‥』
まだ渡したわけではないのに、凄い緊張しているかのようで手が震えていた。後悔がないようにきちんと伝えたい。ちょっとお手洗いに行って落ち着こう。私は一旦その場から離れた。
その後は普通の授業と変わらなかったが、自分の気持ちはソワソワしたままだった。そしてあっという間に時間が過ぎていくと、私はタイミングを狙って今度こそはと、カバンに手を入れるが、肝心のチョコがどこにもなかった。
どうしてだろうと探しまくっていると、それを嬉しそうに見つめてくる女性生徒がいた。
「一条さん、轟くんにチョコ渡すの?」
あの子は、轟くんに告白してた…
『どうして、それを…』
「そりゃ見るよ~だって私興味あるんだもん、一条さんの事、」
『どういう…』
表面上ニコニコ笑う彼女は、片手に自分が作った生チョコが入ってる包装を持っていた。
「これ凄いね~一条さんが作ったんでしょ?」
『そう、だけど‥‥』
「真心ってやつ?凄いね~本当に、」
声に棘を感じられる事に、焦りと不安が押し寄せてくる。彼女は一体何をしたいのだろうか。彼女はそのまま教室から離れて学校の裏側へ走っていった。包装はずっと彼女が握りしめたままだ。
『ま、待って!、返して!』
彼女の行動に驚き、追って走るが、早まる速度は追い付かず、彼女は走りながら、思いっきり握りしめていたそれを、窓の外へ放り投げてしまった。
『っ!!』
「あ~落としちゃった」
あまりの勢いにどこまで飛んでいったかもわからないほどだった。思わず窓の底を見つめるしかなく、唖然のあまり声が出なかった。