第4章 自覚と決着【過去編】
小さい頃、母から拒絶されたあの時から、自分の素直な感情を出すことに引き目に感じている自分がいた。でも、おばあちゃんからの言葉を聞いて、その気持ちが少し荷が軽くなった気がした。
轟くんに自分の気持ちを伝える。
私の答えはそれしかなかった。とはいえ、その言葉を伝えるには、相当の勇気が必要だった。何故なら、その言葉を発した瞬間、彼と私の関係が、いい意味でも悪い意味でも、変わってしまうからだ。
(…)
しかも、相手の彼は、恋愛ごとには興味ないってハッキリ言っていたことも考えると、最悪拒絶される可能性だってある。クラスメイトとしか認識してなかった人が、そんな風に見ていたと知れば、幻滅されるかも知れない‥‥でも、
(相手がどう受け取るかはその人しかわからないさ)
おばあちゃんの言う通り、結局それは伝えてみないとわからないのだ。
「おい、」
『あ、』
「どうかしたのか」
『うんうん、なんでもない』
その決心をしてから、きちんと言わなきゃと思いつつも、中々タイミングが合わず、言う事ができない現状がもどかしかったが、まだ変わらないこの関係性が心地よく感じてしまう事が、自分の弱さを表してるようで複雑だった。
『轟くんは、ヒーロー目指すの?』
「…いきなりなんだ」
『あ、いや…ほら、進路学習の授業もあるし、実際どうなのかなって思って、』
急に話題を変えてしまったが、個人的に気になっていた事でもある。中学2年ももう半年以上経ってしまっており、恐らくあっという間に中学3年生になり、進路を考えないといけなくなる。ヒーロー科を目指しているなら尚更早い段階で準備しているだろう。
「まあ、そうだな」
『じゃあ、高校はヒーロー科に進むのかな』
「そうなる」
『.....そう、なんだね』
だとすれば、ヒーロー志望ではない私と、ヒーロー志望の彼との関わりは、中学を卒業すれば、ほぼ永遠に失われるだろう。仮に同じ高校だったとしても、ヒーロー科の彼と普通科に進む私では授業も違うし、会う頻度はほぼないに等しい。
やはり気持ちを伝えるチャンスは限られている。
「お前は?」
『私は...ヒーローにはならないから、普通科に入る予定だよ』
「そうか、」
『....別々でもお互い頑張っていきたいね』
「....そうだな」
改めて自分に時間がないことを再確認した。