第4章 自覚と決着【過去編】
あの告白現場を見てから、私の感情は揺らいでいた。自分の矛盾した気持ちへの向き合い方、轟くんのあの言葉、すべてが頭の中をぐるぐる回っていた。
『‥‥はぁ、』
家に帰っても溜息ばかりだったことが気になったのか、おばあちゃんが自分に声をかけてくれた。
「どうしたの、沙耶。」
『おばあちゃん、』
「溜息してばかりじゃないの。何があったの?」
だいぶ、自分が参っているのが見え見えだったのだろうか…それを考えると心配かけてしまって申し訳ない気がした。
「話してみな。話して楽になることもある」
『そうかな、』
「そうよ、今まで言ってこなかったけど、意外に顔に出やすいタイプなんだから」
『っう』
そんなに顔に出ていたのかと思うと何か恥ずかしかったが、私は今思っていることを素直に話してみた。
『気持ちがわからなくなってしまって…』
「気持ち?」
『そばにいるだけでいいと思っていた相手が、いつの間にかそれだけじゃ苦しくて…どうすればいいかわからなくなくて』
「…なるほどねぇ」
彼女は自分の綴った話を聞くと、肯定するかのように返答してしてくれた。
「別に悪いことじゃないさ。誰でも持つ普通の感情だよ。」
『でも…、本人はそういうのに興味ないって言ってるのに、私がそんな事考えてるなんて、って思ってしまって』
「あらまあ、優しいのね。」
優しい…そんなことない。自分は昔も今も臆病な人間なのに、
「相手の心を汲み取ってあげることも大事だけど、自分の気持ちを相手に伝えてあげることも大事なのよ」
『…それが、相手にとっては嫌だったとしても?』
「相手がどう受け取るかはその人しかわからないさ。沙耶はどうしたいの?」
『…え?』
「言ったでしょ、大事なのは自分の気持ちなのよ。」
自分の気持ち、そんなこと考えた事がなかった。相手が何を望んでいるか基本的にそれしか考えてなかったからだ。
「沙耶は相手を思いやりすぎてるんだから、たまには自分の気持ちに正直になったら?」
たまにならバチは当たらないでしょう、そう言って私の頭を撫でてもらった。暖かい指先と共に、悩みだった部分が少しずつ落ち着いていくのを感じて、自分なりの気持ちが整理されていった。
『おばあちゃん、』
「ん?」
『聞いてくれてありがとう』
ある程度自分の答えは出ていた。