第4章 自覚と決着【過去編】
まさかの告白現場を目撃してしまい、ここから離れるべきか悩むが、そうなる前にバッサリと轟くんから返事が返っていた
「悪いがそういうの興味ねぇし、他をあったてくれ」
「ま、待って!私本気だから!お試しにでもいいから付き合うのは?ダメ?」
「はぁ....」
これ以上話を進める気がない彼は、もういいだろといわんばかりにその場を離れようとすると、納得がいかない様子の女の子は問いかけていた。
「もしかして、一条さんなの?」
「は?」
急に自分が呼ばれた気がして思わず声が漏れそうになるのをグッとこらえた。どうしてそこで私が出てきたんだろう
「皆噂してるよ。一条さんと一緒にいる事多いから、付き合ってるんじゃないかって、一条さんのこと実際好きなの?」
「…」
そんな噂になっているのか、と改めて自分を客観的にみてみると、確かに他の人との接点が薄い自分にとって、轟くんと一緒にいる事が他人からみると、おかしいのかもしれない。現に一緒にお弁当を食べた所を見た男子生徒がからかったりしていたからだ。
(もしかして、あの手紙…)
靴箱に嫌がらせみたいな手紙で「轟君に近づくな」という文言が書いてあるものもあったが、もしかしてあの時からその噂は広まっていたのだろうか、だとしたら付き合ってなんかーー
(.....)
その先の思考ができないまま、固まっていると、
「んなわけねぇだろ、」
彼は迷わずきちんと誤解であると答えていた。
「あいつとは、単にクラスメイトってだけで、それ以下でも以上でもねぇよ。あいつだって現にそう接してるのに、誤解を招いてもらったら困る」
ああ、そうだ。
彼とはそもそも付き合ってないし、私と轟君の関係を考えるなら「同じクラスメイト」と表す事が一番適切なはずだ、何も間違っていないはず、だ。それなのに、
「で、でも!」
「そもそも、俺は今恋とかにうつつを抜かしている暇なんてねぇ。」
「‥‥」
「そんな暇なんてねぇんだよ、俺には」
皮肉めいたような言葉を吐いてその場を去っていく姿に、私はしばらく立ち止まるしかなかった。
暇なんてない、まるで自分の愚かな感情を見抜いて発したかのような言葉だった。