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【ヒロアカ】幸せな恋の諦め方【轟焦凍】

第4章 自覚と決着【過去編】



 話の流れ上「はい」と答えてしまったが、轟くんの親族の方に自分の奥にある気持ちを無意識に晒してしまい、思わず焦ってしまった。決してよこしまな気持ちではないが、気持ちが落ち着かなかった。

『あ、あの…』
「心配しないで、焦凍には言わないから。」

 ニコニコと嬉し気な彼女に、どんなに言い訳しても通じないだろう。認める他なく、小さく「はい」と呟やき、恥ずかしさのあまり手で顔を隠した。

「恥ずかしがらなくても大丈夫だよ。誰かを好きになることなんて素敵なことだし、」
『うぅ…』
「改めて焦凍と仲良くしてあげてね。沙耶ちゃん、」
『は、い…』

 恥ずかしくてまともに彼女の顔を見ることはできなかったが、初めて名前で呼んで頂いた事に嬉しさが募っていた。後に気軽に冬美姉さんって呼んでね、と言ってくれた事も優しさに溢れていた。





 数日後、轟くんにそのことを話すと、表情は特に変わる事なく私の言葉に耳を傾けていた。

『轟くんのお姉さんは優しい人だね。』
「…まあ、そうだな」
『…?途切れが悪いけど、どうしたの?』
「いや…正直姉さんとは最低限の話しかしねえから、お前と仲良く話してるって言われてもあまりピンとこねぇ」
『そうなんだ、』

 事情が事情だ。世間の兄弟姉妹像とはまた違うのかもしれない。それにしても、

『ふふっ』
「どうかしたのか」
『うんうん、こうやって轟くんと話せる事が幸せだなって思ったの』
「.....何言ってんだお前」

 変なこと言うんじゃねぇと軽めに呆れられてしまった。たしかに我ながら何言ってるんだと思うが、轟くんと出会ってから、些細な事でも学校が楽しく感じられたのは事実であり、改めて素直にそう思えたのだ。

「もう俺は教室に戻るからな」
『あ、待って!』

 先に行ってしまう彼の速度は速く、私は必死にその背を追いかけていた。歩調が速い彼は私を見向きもせず歩いていってしまうが、自分はそれについていくだけで嬉しかった。

(‥‥好きって伝えなくてもいい。)

 これ以上は何も望まない。ただ、このままずっと一緒に過ごせたらいいのに、と願わざるを得なかった。


 でも、幸せな夢は少しずつ終わり始めていた。
 
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