第4章 自覚と決着【過去編】
そのままスイーツショップに入ってしまって、本当にいいんだろうかと迷っていると、
「もしかして、甘いのとか苦手かな?」
『そ、そんなことないですよ。むしろ好きです。』
逆に気を使わせてもらって申し訳ないと思い、とりあえず素直に厚意を受け止めることにした。
「一条さんは何にする?」
『あ、じゃあ、この苺のショートケーキで』
ケーキは好きだ。小さい頃、あまり食べたことがなかったからか、初めておばあちゃんから誕生日のお祝いケーキをもらったときは強烈に覚えている。
座席に座ってしばらくしてから、デザートがこちらへ来た。
『なんだか申し訳ないです。おごってもらって…』
「いいの。お礼なんだし…、こちらこそ一昨日きちんとお礼できなくてごめんね」
いただきますと、心の中で言うと、ゆっくりと甘くてとろけそうな味をゆっくり味わっていると、彼女はコーヒーを片手にじっと私を見つめていた。
「焦凍は…学校ではどう?」
『焦凍さん、ですか?』
話題が轟くんへ移った事に驚いたが、轟くんの家族は、お母さんの事情もあり、お姉さんが余計に気にかけているのかもしれない。
「家にいるときはあまりしゃべる機会がなくてね。普段どうしてるのかな?」
『わ、私の知ってる範囲でいいんですか?』
「もちろん」
それから今までの彼の出来事を話した。彼は基本あまり話さないけど、話す時は意外に色んな事を話してくれることや、彼にお弁当を渡した件などを話した。
「そんなことあったの?ふふっ」
『ど、どうかされましたか?』
「いや、嬉しいの。焦凍の話が聞けて」
笑っている彼女の姿は綺麗で、思わず見とれてしまった。
「焦凍も普通に学校生活を満喫しているみたいで安心した。これも一条さんのおかげなのかもね。」
『そんな、むしろ私、彼に助けてばかりで…』
「そんな事ないよ。話してもらってありがとうね」
感謝の言葉を言いながら、私の手を握る彼女に驚きを隠せない。
「よかったら、これからも焦凍と仲良くしてあげてね。」
『も、もちろんです』
その誠意に素直に答えたいと思いながら手を握り返した。
『轟くんといると楽しいですし、これからも仲良くしていきたいです。』
「焦凍の事大好きなんだね」
『はい....え、えっ?』
サラッと言い放った彼女の言葉に思わず二度聞きしてしまった。