第4章 自覚と決着【過去編】
家に帰ってから、しばらくボーっと轟くんの事を考えてしまった。体調に関する心配もあるが、何より彼があそこまで弱っている姿を目にするのは、ほぼ初めてに近い事もあって、凄く印象に残っていた。
(大丈夫かな)
彼のお姉さんが看病してくださるし、自分が心配しても仕方のない事はわかっていたが、家の門で急に倒れた姿や、唸ってたりして苦しそうだった姿が頭の中から離れなかった。
翌々日、休みを経て、轟くんがついに学校へやってきた。
『…体調は、大丈夫?』
「ああ…別に問題ねぇ。」
『そっか、』
普段の変わらない彼で心の底から安心したが、安心故か少し涙目になってしまった。
『急に倒れて心配したよ…』
「…悪い」
『心臓に悪いから、疲れた時は言ってね?手伝うから』
とりあえずよかった。と答えると同時に、彼は何か言いたげな表情でこちらを見渡していた。
『な、何?』
「お前、あの時‥‥」
『…?』
「いや、いい」
何か深刻な事があっただろうかと考えていたが、彼は結局何も言わずにいた。‥‥どうしたんだろう
「それより、姉さんがお前に礼がしたいらしいが」
『わ、私?』
一昨日私がしたことなんて、せいぜい部屋まで寄り添ってあげただけだ。お礼するほど大した事はしてない。
「お前、明日暇か?」
『え?う、うん。』
「じゃあ姉さんに伝えとく。」
『あ、ちょ、』
自分に考える暇も与えずさっさと電話を取り出しては、明日、お姉さんとの約束を取り決めていた。ついでに私の電話番号まで彼に教える事になり、物事の展開が早すぎて私はついていけなかった。
休日の朝、お姉さんから指定された場所へ待ち合わせをしていた。何があるのだろうか、正直想像もできない。やっぱり相手が年上の女性という事で、きちんとしなくてはという気持ちがより緊張感を生んでいた。
「一条さん?」
『は、はい』
「よかった~」
こうやって直接会うのは初めてだ。轟くんのお姉さんだと思わせる綺麗な白い髪と、女性らしい優しい微笑みを浮かべていた。微笑みに一瞬緊張が抜けそうになるが、最初何から声をかければいいかわからなかった。自己紹介は電話でしてしまったし…
『あ、あの…私、』
「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。一緒にデザート食べに行くだけだから」
『え?』
思わず言葉を疑った。デザート…?