第4章 自覚と決着【過去編】
『えっと、…轟くん?』
「…ん、」
私はいつの間にか、彼と同じ布団の中に入ってしまった。彼の手が自身の背中に伸ばされた時は、思わずビックリしてしまったが、彼は熱で意識が朦朧としているみたいで、この状態に気づいていないようだった。抱きしめられているこの状況が、何とも恥ずかしくて思わず話題を振った。
『あの、ご家族の方に電話した方がいいかな?』
「……」
返事を待っていたが、彼は布団の温かさに眠気を誘われたのか、目を瞑ったまま静かな寝息を立てていた。
『寝ちゃった…』
部外者の私がこのままここに居座っている事が申し訳なく感じたが、何も動けない状態の今、どうすることもできなかった。
(綺麗な顔…)
目を瞑っている顔は初めてなので、ついマジマジと見てしまう。整った顔に、熱による薄ら見える汗や、髪の艶かさを見て思わず心臓が跳ねるようだった。それでいて、抱きしめる力は男の子と思わされる程、筋肉がしっかりついた腕と大きい手で、顔のギャップも相まって、全身火照りそうになる程熱くなっていた。
『...あ、っう』
仕舞いには彼の暖かさや汗の匂いを意識してしまって......、ダメだ。これ以上は私の心臓がもたない。それに、こんなところをご家族に見つかれたら騒ぎどころではない。轟くんには申し訳ないけど一旦離れないと、
「…っ、」
そうしようと思った瞬間、小さく唸り声が聞こえてきて、ハッとした。とりあえず様子を見るため、慎重に彼から離れて確認すると、額に汗が付着して苦しそうにしていた。嫌な夢でもみているのだろうか、
『…』
辛い表情の顔に色んな思いが巡りだす。いつも助けてくれた時の印象が強いが、彼だって辛い過去があったり、悩みを抱えている部分があるだろう。こうして熱が出ていることも、今までの疲れが蓄積されて現れたのかもしれないと考えると、まるで自分の事のように辛かった。
せめて安心して寝れるようにしてあげようと思い、彼のほつれた髪をゆっくり直してあげた。
『ご家族の方はいつ戻られるのかな…』
他者の家で勝手に動き回るわけにはいかず、自分の行動に限界を感じていた。せめてご家族に彼の状態を知らせる事ができたらと思っていると、
ブーブー
携帯のバイブレーションの音が部屋に響いた。