第4章 自覚と決着【過去編】
あの日、自分の気持ちを自覚して以降、彼との何気ない挨拶や交流をするたびに、鼓動が早くなるのはもちろんのこと、彼の行動一つ一つに目が行くようになった。
それはある出来事でもそうだった。
『…?』
いつもと変わりない表情の彼だったが、何か一点をぼんやり見つめてる事が多く、彼が消しゴムを落としている事を告げて渡した時も、
『…消しゴム落ちてたよ』
「……ああ、」
何故か一テンポが遅れて反応していたのだ。何かここにあらずという顔をしていた。もしかしたら、体調が優れないのだろうか
『お茶飲む?』
親切心で自分が持っている水筒の冷茶を渡してみると、今度は何も反応せず、無言で飲み干していた。彼は口数が多い方ではないが、反応も呟きもないというのは、流石に違和感が拭えなかった。
帰り道、調子悪そうな彼の安否が心配になり、後をついていった。本当はよくない事なのだろうが、ちゃんと家に帰るかだけを確認させてほしかった。
彼の後をついていくと、大きい日本家屋の所までたどり着いた。ここまで広い住宅地を見たことがない自分にとっては、その広さに驚いてしまった。とりあえず、彼は家に到着したようだ。私が心配するまでもなかったようだ。一安心しようとした時、
バタンッ
『?!』
凄い衝動の音が聞こえると同時に、家の門の前で彼が倒れているのが見えた。
『と、轟くん?!聞こえる?』
「…っ、」
幸い意識はあるようで、また態勢を立て直していたが、とても正面を向いて歩ける状態じゃなかった。手で目を覆う姿の彼は辛そうに見えた。どうしよう、病院に電話した方がいいんだろうか。あ、それよりも家の中に入れさせる事が先だ。そう思い、彼に寄り添うとすると、
『....体が熱い』
触れた轟くんの体温が異常に熱かった。事態の深刻さが伺えた。
『た、立てる?とりあえず家に入ろう?』
軽く頷いてる彼を支えながら、借りた鍵で門を開け、中へ進んだ。ご家族の方がいらっしゃればと思ったが、あいにく人の気配がなかった。
『轟くんの部屋は?』
「……あっち」
彼の誘導にしたがって彼の部屋に到着すると、ゆっくり横になろうとしているのを見かけ、近くの布団を彼にかぶせてあげようとすると、彼の強い力に引き寄せられ、
『えっ?』
いつの間にか布団ごと私は彼の元へ倒れていった。