第4章 自覚と決着【過去編】
翌日、嫌がらせは一切なくなっていた。聞くところによると、私が嫌がらせを受けていたという事が明確化され、先生から例の彼女と彼女に加勢した人たちは相当厳しく忠告されたみたいだ。しばらく反省文や謹慎処分などで対処するみたいだ。
そして、一人のクラスメイトから謝罪が返ってきた。
「一条さん、ごめんね。私、あの子の素性知ってるから怖くて」
『素性…?』
小学生の頃から彼女は、自分が気に入らない子を徹底的に追い詰めて、嫌がらせする傾向があり、そのために暴力もいとわなかったらしい。
「轟くんも多分気づいていたのかな。早く解決できるように先生に報告しているのも度々見かけたし」
『‥‥え』
思わず言葉を見失った。待って、いつから?一度もそんな素振り見たことなかったのに、
『そう、だったんだ…』
誰にも言わず、陰ながら彼は状況を打破するために行動してくれた事実が、胸がいっぱいになる。嬉しさよりも恐縮な思いでいっぱいだった。
『轟くん、』
その後、轟くんと何とか話したくて声をかけた。彼はいつもの無表情な顔でこちらを振り返ってくれた。いつも通りの彼だった。
『助けて、くれてたんだね』
「…どっかで聞いたのか」
『クラスメイトの人が教えてくれたの。…色々とごめんね。本当に』
「…」
『自分で解決しなきゃいけない問題だったのに、轟くんに手伝ってもらっちゃって、本当なんてお詫びしたら…』
せめてものお辞儀をしようと頭を下げようとした。私にできる誠意はこれぐらいしか思い付かなかった。そしたら、頭を軽くコツンと叩かれた。
『痛っ‥?!』
「バカ言うんじゃねぇ」
意外な行動に唖然となったが、彼の顔はいたって真面目だった。
「買いかぶりすぎだ。俺は俺が正しいと思った事しかしてねぇし、たまたまそれがうまくいっただけだ。」
『でも、』
「そもそも被害を受けてるのお前だろ、俺に謝れても困る。」
確かに彼の立場からしたら、謝ってもどう反応したらいいのか困るもしれない。だとしたら、言える言葉はこれしかなかった。
『あ、りがと、う…』
「よかったな。」
そう返答した彼の姿は、誰よりもかっこいいヒーローに見えて、思わずまた胸が高鳴っていた。
(そっか、私は)
感情の流れに沿ってしみじみ自覚していった。
私が轟くんが好きだということを___