第4章 自覚と決着【過去編】
彼の言葉によって、賑やかだった騒ぎも徐々に不穏になっていた。明らかに彼が不機嫌であることが目に見えていたからだ。
「ど、どうしたんだよ。轟、冗談だろ冗談、」
「冗談?お前らが勝手に盛り上がっているのを押し付けてるだけだろ。」
すると、男子生徒の気に障ったのか、明らかに雰囲気が変わっていた。
「は、はあ? お前、ヒーローの息子だからって調子に乗ってるんじゃねぇの?!」
「…何か言ったか」
「っひ、」
男子生徒の言葉も、彼の圧迫感に気を呑まれてしまった。それもそのはず、不意に右の氷の部分が発動していたからだ。私も思わず驚いてしまった。
「お、落ち着いて、みんな轟くんに興味津々なんだよ」
だから仲良くしようよと、動揺の声が聞こえる中、例の女子グループのリーダーが、擦り付けるように轟くんの腕を触ってきてた。明るいトーンで話す彼女は印象が違くみえた。しかし、
「触るな」
有無を言わさず厳しい表情で彼は振り払っていた。鋭い視線の彼に思わず私までも凍るような気持ちだった。こちらを一瞬見ては、改めて彼女に話した。
「てめぇらが何を思うが勝手だが、コイツがいじめられてるのを黙ってみていた奴らと仲良くする気はない」
その言葉により、反論しようとしてた男子生徒、女子生徒全員が何も言えなくなっていた。
「特に嫌がらせの首謀者のお前と仲良くなるつもりもない。」
そんな風に断言した事に驚き、女子のグループリーダーが自分ではないということを反論しようとしたが、クラスの雰囲気がそういう余裕を与えてくれなかった。
「そ、そうだよ!元は言えば、お前がわるいんだよ!お、俺は止めたんだからな」
「確かに…ひ、ひどいなって思う部分があったよね」
「なっ!」
本当に知らなかった人もいれば、知っていて何も言わなかった人たちがいる中で、彼女に集中攻撃され始めていた。
(こんな事になるなんて、)
確かに彼女の影響で、いろんな怖い思いもしたのは事実だ。ただ、だから彼女だけ責められて解決できる雰囲気になっているのが何とも言えなかった。
『あ、あの』
「おいお前ら静かにしろ、授業に戻るぞ。」
私が何か言おうとした頃には、すでに自由時間が終わっており、先生が入ってきてしまった。それを察したのか、生徒たちは各自の席へ戻っていった。色んな複雑な思いだった。