• テキストサイズ

【ヒロアカ】幸せな恋の諦め方【轟焦凍】

第4章 自覚と決着【過去編】



 あの微笑みを見た後、ずっと胸が高まっており、教室に移動する際も、彼の顔をまともに見る事ができなかった。 

(どうしちゃったの、私)

 よくわからない高鳴りに混乱しつつ、授業を聞いていても、無意識に彼の方へ視線が向いてしまう自分がいた。あの微笑みが嘘かのように無表情な姿に、何とも言えない気持ちになる。

 (あれは夢だったのかな、 )

 だったら、この高鳴りは何なのだろうか。

 授業が終わって家にたどり着くと、おばあちゃんがにっこりと歓迎してくれた。

「どうだったの?」
『え、どうだったって…』
「例の子に決まってるでしょう」

 普段の感じとは全然違う事に驚いてしまう。どうしてこんなに彼女は乗り気なのだろうか。

『「おいしかった」って、味は特に問題はなかったよ』
「あらぁ、それはよかったねぇ。」

 何か圧を感じるこの視線はなんだろう。期待している眼差しに思わず唾を飲み込んだ。

『…えっと』

 改まって緊張する話でもないのに、何故か気持ちが落ち着かない。思えば、彼の家庭内の話で切ない気持ちになったり、最後の彼の表情で心がざわめいたり、いろんな感情が廻っていた。

「彼と何かあったのかい?」
『…あ、いや‥そういうわけじゃ』

 どうやら、自分の感情を説明するのに言葉が詰まっていたらしい。彼女は一瞬にして眉をひそめた。

「ごめんなさい。こういう話をするのが久しぶりで、つい舞い上がってしまったわね、」
『そ、そう?』
「ええ、貴方が喜んでいる姿が珍しかったから、つい」

 その柔らかい声が安心感を与えてくれた。私はその安心に浸りながら、自分の感情を整理して語った。

『いろんな話をしたの‥‥今まで知らなかった彼を知って、よかったって思った』

 改めて話すのは何か恥ずかしいが、今の心情で間違いなかった。

「そうなのね。」
『うん‥‥だから、これからも仲良くしたいって思ったの。』
「あら、それは友達として? 」
『た…ぶん、』

 仲良くしていきたい。それは本当だ。でもこの思いが「友達」と片づけるだけのものかというと、正直自分でもわからなかった。それほど今まで感じた事のない感情が自分の中に芽生えていた。

「そう…どういう形であれ、おばあちゃんは応援するから」

 今はそういう時期なのよ、とつぶやく彼女の言葉の意味を知るにはまだ早かった。
/ 218ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp