第12章 存在意義とゆらめき【原作編(仮免)】
翌日、引越しの作業を無事済ませた後、父と例の女性が謝りたいということで話し合いの場を設けたいと話した。
本当は話し合いを避けたかったが、今後とのやり取りに影響が及んでしまうことを考慮して、会うことに頷いた。
正直、父や新しい母からの話は全然頭に入ってこなかった。
謝罪というのは形式だけで、結局言い訳を正当化して納得してもらうための場のように感じた。
私は色々思うところがあったが、金銭面で今まで父から援助してもらったことを鑑みてそれについては不問にすることにした。
でも、これからの彼らの生活や関わり方について聞かれた際は、しばらく距離を置くと伝えた。
気持ちの面で関わることは辛いと判断したからだ。
今後金銭の面で父に助けてもらわないければならない部分があるので、やりとりは必要になると思うが、
それ以外ではしばらく関わらないと伝えた。
それ以降、連絡は取り合っていない。
________
2学期が始まり、雄英の制服を着ている学生たちの光景が広がる。
2学期からまた新たな生活が始まる。
それに伴い、新しく寮生活が始まる。
きっと他の生徒たちは新たな出会いや関わりに胸を躍るだろう。
まるで私だけ、時間が止まったかのようだ。
『…私のいるべき場所じゃ、ないよね。』
校長先生の面接に言われた、無個性である自分と個性を持っている彼らとのかかわり方について指摘があったことを思い出す。
私はその時、真の意味で無個性である自分の立場を理解していなかった。
『…ちゃんと、理解しなきゃ』
今回の家族の件で、改めて思い知った。
自分の居場所はどこにもないということを。
そして私の願いはただの依存に過ぎなかったことを、
その事実があまりに苦しく、生きる活力を失わせるから、
いろんな悲しみや怒り、苦しみは、全部蓋にして、
ただの笑顔の仮面で封じ込めることにした。
たとえ私の本心が嘘っぱちだったとしても、幸せじゃなかったとしても、もういいんだ。
今はもうこうすることでしか自分の精神を保てる方法がなかった。
この世界で私の居場所がないのなら、
私はもう、誰にも、期待しない。
何も願わず、
私はただ一人生きていく方がいい。