第12章 存在意義とゆらめき【原作編(仮免)】
パリン、
どこかのグラスの破片が落ちた音が聞こえる。
まるで自分の気持ちを表してるみたいだった。
その音と共に、父と新しい母が自分の存在に気付いたのか、凍りつくように固まっていた。
......ああ、やはり聞かれたくない内容だったんだ。
『......おとう、さん』
「さ、沙耶聞いてたのか?」
『.........あ、うん』
とはいえ、この場で何を語ればいいんだろう。
そう思いながら、なるべく明るく声をかけた。
『私は、大丈夫だから』
「さ、沙耶」
『わか、ってるよ。......私が学校に通えてるのも、生活に困りがないのも、お父さんが頑張ってるからできてるわけだし.....色々私のことで疲れてることもあったんだよね?』
私を唖然と見つめる2人
どうしてそんな目で見るの?
やめてよ、
憐れむような目で見ないでよ
「沙耶、違うんだ、」
『気づけなくてごめんなさい。でも、私に気を使ってもらわなくていいよ。』
「ち、違う!そんなこと『心配しないで、高校を卒業したら自分で稼ぐし、お父さんの力は借りないよ。』
父の本音を聞いてショックのはずなのに、
驚いてる彼らよりもスラスラと話せてる自分にびっくりする。
「そうしたらきっと新しいお母さんとの時間も増えるね」
「沙耶、ちゃんっ、」
「......大丈夫、です。」
新しいお母さんは何か声をかけようとしているみたいだが、
私は断る形でやんわりと言葉を紡ぐ。
『色々期待してしまってすみません。家族訪問や重要な時とかにはさすがに同席が必要になると思いますが、それ以外だったらできるだけ負担にならないようにしますね。....お腹の赤ちゃんのためにも』
「!」
『今日はお会いできてよかったです。......私はこれで』
「さ、沙耶待ってくれ。話をしよう。きっと誤解している」
『ご、かい?』
.....誤解、って言った?
「俺はお前にとっていい父でありたかったんだ。さっきのは言葉の綾ってだけで深い意味はない。」
深い意味はない、か。
.....そう捉えることもできるけど
今はそんな言葉聞きたくなかった。
『ごめんなさい。.....話し合いはしたくないの。』
「沙耶っ!」
早くその場を去りたくて駆け出した。