第12章 存在意義とゆらめき【原作編(仮免)】
「あいつは昔から優しくていい子なんだ。今は受け入れるのが難しくても俺たちのことを理解してくれるはずだ」
「....まあ、それならいいけど。私、あの子の分まで生活費補助できないわよ?今はこの子が最優先だし」
「わかっている。生活費諸々は俺が負担するから、お前は気にしなくてもいい。....それに」
「後数年耐えれば、あの子の面倒からもようやくおさらばになれる。その時まではいい父でいないとな」
ーーーーえ?
「......いい父、ねぇ、」
「あいつのために毎晩働いて金も出してあげてるんだ。ほぼ9年だぞ?ここまで不自由なくさせてあげているのに何か問題でも?」
「....その割にあの子に全然会わないのね。仕事なんていくらでも調整できるのに」
「....バカ言うなよ。普通の定時勤務じゃないんだ。子供に割く時間なんてできるわけないだろ」
「さぁ、....どうかしら」
淡々と話す内容に体が硬直する。
ーでも、後数年耐えれば、あの子の面倒からもようやくおさらばになれる。その時まではいい父でいないとな
父が言った言葉は、視点を変えればいろんな解釈にも取れた。別に悪い意味で言っている訳ではないのかもしれない。
実際、私の金銭面でかなり貢献してくれていたし、時間がないながらも私のために新しい家族も紹介してくれた。
......でも、
自分の中でスンと気持ちが沈んでいく感じがした。
何はともあれ、私の存在が父にとって悪い意味としての「面倒」であることには変わりないのだと実感してしまった。
そう考えると自分が抱えているこの違和感に納得が行った。
ーうーん、十数年ってとこかな?
ー私とあんたの関係が、あの子にバレたら困るでしょ?
彼女が言ったあの言葉。ずっと気になっていた。十数年ってなると、私の母と父が険悪な仲でいた頃だ。その時期に交流していたということ。そして、バレたら困るということ。
導かれる答えは一つ。
父は母との関係を持ちながらも海外で新しい女性と過ごしていた、と言うこと.....
.......つまり、
................
最悪なことが頭をよぎる。