第12章 存在意義とゆらめき【原作編(仮免)】
私の気持ちは......
そう言葉に発したくてもできない。
彼らの関係について私は了承したのに、今更こんな気持ちになるなんてわがままかもしれない。
家族の幸せを素直にお祝いしたいのに、自分の相談なしで進んでいたことに軽くショックを受けていた。
どうして、そんな大事なこと、自分には教えられてなかったの?
そんな寂しさが込み上げてきた。
そう思いつつ、話は進んでいくけれど、その先は何も覚えていなかった。食べていた高級料理も味がしなかった。
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時間がすぎ、帰る時間が近づいてくる。その前に軽くお手洗いと思い、その場を去った。
違和感と不安がじわじわと込み上げていた。
軽く冷えた水で顔で浸し、ハンカチで拭う。落ち着けばちゃんとこのどよめきも収まるのかな。
(....今後のこと、ちゃんと向き合わないと、)
私がどう思うのであれ、新しい家族になるんだ
慣れないかもしれないけど慣れていくしかない。いろんな負の感情も理解した上で関わっていくしかない。
(.....よし、)
覚悟を決めて、私はお手洗いから出て、父と新しい母の元へ向かおうとしていた。
丁度会計をしているのが遠くでわかり、近づこうとしていたときだった。
「....ねぇ、本当にあの子にちゃんと話したの?」
その女性が放つ言葉に硬直し、足を止める。
「もう、どうするのよ。明らかに動揺しちゃってるじゃない。だから早く話したほうがいいって言ったのに」
「悪い。」
「まあ今回は色々急にいろんなこといいすぎてしまったのも原因ね。私も反省しておくわ」
さっきの私との出来事についてだった。
そうか、そう思っていてくれたんだ...
そう安心してからの、次の言葉が頭を真っ白にさせた。
「しっかりしなさい。丸く収まるようにしないといけないんだから。私とあんたの関係が、あの子にバレたら困るでしょ?」
「大丈夫だ。その点は引き続き気をつける」
.......バレたら困る?
それはどういうこと?