第11章 逃走と真実【原作編(合宿/神野)】
※一条視点
....消毒、して、いいか?
一瞬何のことだろうと疑問に思ったのも束の間、
彼は私の首元にそっと唇を寄せていた
(?!?!)
あまりの驚きに心臓がバクバクとうるさい。どうしたらいいのかわからず混乱していた。
私は今何をさせられているの?
おそらくあの継ぎはぎの人に噛まれたところを中心に押し当てているんだと思うけど、自分じゃよくわからなかった。
(......はず、かしい)
轟くんは消毒と言っていたけど、首元に唇を寄せるなんて
まるで.....
恋人たちがする行為みたいで意識させられる。
しかも、唇を寄せる度に、一つ一つの柔らかい感触に反応してしまい、なんだかいけない気持ちになってくる。
『わ、わかった、っ、今度から注意するから。』
「........ん」
『ね、ねぇ、ってば』
恥ずかしさとくすぐったさでそう訴えかけたが、聞いてもらえなかったのか、その行為は続行される。
どこを向けば分からず彼をじっと見たが、位置的に首元の真横にいるため、表情は見れなかった。
(い、いつ終わるの、これ)
軽く3分ぐらいが経っているような時間の感覚がした。
静寂の中で首元に寄せるリップ音が生々しく聞こえてくる。
「.....ん、ふ」
『.......っ、』
彼の低い吐息が間近で聞こえてきて恥ずかしい気持ちが最高潮に達していた。
これは消毒なんだと自分に言い聞かせてなんとか変な声が漏れないよう我慢していたが、そろそろ限界だった。
そう思い、そろそろやめようと轟くんに言おうとしていた時だった。
「ん、」
『......っ!』
唇の感触から急に舌の感触が首元にすーっと流れていた。
油断していたせいもあって、我慢していた声が漏れてしまった。
『......ひゃっ、』
「......!」
自分が予想していたよりも、敏感に反応してしまったのか、軽く体が震えていた。
轟くんも私のそんな反応にびっくりしたのか唇が離れて行った。
しばらく沈黙が続いていた。
正直かなり気まずかった。
「.....悪い。」
『.....え?』
「....お前があまりに呑気に言うから、つい.....それに、」
何か伝えようとしているみたいだったが、轟くんにしては珍しく言葉が出てこない様子だった。