第11章 逃走と真実【原作編(合宿/神野)】
『…拷問とかされてたわけじゃないし、それに比べれば、まだいい方、』
「押し倒されたって‥‥、」
俺はその言葉を深刻に捉えていた。
「‥‥なぁ、これ、なんだ。」
『これ?』
「あのヴィランになんかされたのか?」
『え、っと…』
「…見せてみろ。」
『…え?!』
包帯が解かれた先に見えたのは首筋に酷く赤く付けられた歯型の傷だった。
「‥‥これ、」
『…あ、えっと、嫌がらせでね。つけれたの。』
「!?」
『…でも、本当にこれぐらいで、何もなかったよ?あ、安心して、』
安心して、だと?
本当にその意味を知っているのかと思うぐらい心が乱されていた。首元についてる赤い歯型の傷が酷く目に入ってくる。
無意識に彼女の首元に触れていた。
『......っ、』
「轟、くん?」
『こんなの見せられて、安心できるわけねぇだろ....』
どうしてそう平然としてられるんだ。
あのヴィランに何かされてもおかしくなかったはずだ。言うなれば、もっと、酷い結果になっていたかもしれない。
『.......』
ムシャクシャした気持ちが留まらず、彼女の肩に顔を埋めた。
白い肌の感触が柔らかい。その感覚に先ほどの怒りが少しだけ緩和される。
「轟、くん?」
『どうなってたか、わかんねぇんだぞ』
「それは、うん....わかって『分かってねぇ。』
本人はその傷跡が見えないから流暢にそう言えるのだろう。
正直この傷跡は俺にとってまるであのヴィランが挑発しているみたいだった。
ー守れるといいなァ?
あの時に言っていた言葉みたいに
(.......うるせぇ)
頭から離れないあの言葉と共に今すぐこの傷跡を消したい
俺は感情の衝動のまま、彼女の両肩を手で押さえつけていた。
柔くて細い肩。
あのヴィランもこうしてこいつに触れてこの傷跡を残したんだと思うと怒りが沸いてくる。
「な、なに?」
『.....消毒、して、いいか?』
「...え?、...っ?!」
俺は、
いつの間にか彼女の首元に近づき、そっと唇を寄せていた。
歯型でついたその傷跡を上書きするように