第11章 逃走と真実【原作編(合宿/神野)】
※轟視点
アイツが目を覚ましたと、連絡をもらった日の事。
俺は急いで学校終わりに見舞いに行く事を決めた。
本当は、今回爆豪奪還に関わったA組と行くはずだったが、予定が合わなかったため、俺が先に会いに行く事にした。
‥‥アイツが無事病院に運ばれた頃、事情聴取や世間の変化などで忙しい日々を過ごしていた。
メディア対応として、アイツが誘拐されていた事については雄英側で情報隠蔽という形になった。
オールマイト引退で世間がどよめく中、この事実が発覚した事による雄英へのダメージが大きくなる事を考えたのと、
アイツの情報が敵側に知らせないように安全を計らう事を雄英は優先させた。
その判断は間違ってないと思える。
この情報を知っているのは雄英ではわずかだ。俺は、オールマイトから今回の件で関わったという事で教えてもらった。
アイツもその情報を漏らさないようにと言われているし、病院側もなるべく彼女について世間側に公表しないよう徹底している。
だから、
アイツは一人の病院室で、寂しい想いをしているだろうと思った。
‥‥本当は、
まだ俺が会いに行くべきではないのかもしれないが、
でも、それよりも彼女の安否が気になっていたし、熱を出しながら倒れているあの事が頭を過って落ち着かなかった。
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深呼吸をし、
彼女の病室の門を開ける。
「‥‥一条、」
『‥‥あ、』
アイツが俺の顔を見た瞬間、驚いたような顔をしていた。
『‥‥‥‥』
「‥‥‥‥」
無理もない。
特に連絡もないまま、急に彼女の病室へやってきた。
それにあの夏休みの出来事があった後の再開だ。彼女にとってはびっくりだろう。
でも、
ここまで来た以上、今更帰る事もできない。
俺は決心して言葉を発した。
「‥‥入っていいか?」
『‥‥うん、』
ゆっくりとベッドの近くと、彼女は意外にも俺が入る事を受け入れてくれた。
『‥‥大変、だったね。』
「それはお前もだろ。」
まさか、俺の心配から会話が入るとは思っていなかった。
彼女は今俺に対してどう思っているのだろう。
「‥‥わりぃ。」
『‥‥え?』
「お前とどう関わっていくか、まだ決まってないまま、お前に会いに来たから。」
『‥‥あ、』
一瞬間が空いてから、
『‥‥そう、だね。』
そう呟いていた。