第11章 逃走と真実【原作編(合宿/神野)】
‥‥相談、か。
例の黒マスクをかぶった人の件を思い出す。
個性を与える個性を持っていると言っていた。
その事実を塚内さんに伝えたかったが、何かしらの個性が効いているのか口に出そうとすると勝手に息が荒くなり、話す事もままなくなっていた。
いや、
何回も試すべきだ。
私は紙とペンを持ってきて、字を書くことにした。
もしかしたら、話しはできないかもしれないけど、文字にして残す事はできるかもしれないと思ったからだ。
『‥‥オールマイト、先生。ちょっと待ってくれませんか?』
「…?一体何をするつもりかい?」
早速ペンで自分が思っている事を書き始める。
これで、なんとか、
そう思っていた。
ーーーーっ!!
ペンを握っていた手に急にしびれがきたと思ったら、また先ほどと同じように呼吸が荒くなり、気持ち悪くなる。
やっぱり、できない?
「いったいどうしたんだ?!まさか、…何かの個性か?!」
『っ!…すみ、ません。‥‥もしかしたら、ですが、そうかもしれません。』
個性が効いているという事は、幸い口にすることができた。
『‥‥今、ヴィランの事を話そうとしたら、勝手に息ができなくなって、口が開かなくなったんです。』
「‥‥なるほど、あり得る話だ。」
意外にもオールマイトは慎重にその話に納得していただいた。
心当たりがあるのかもしれない。
『塚内さんに伝えようとしたんですが、先ほどできなかったので、別の方法で伝えようと思っていたのですが…力になれずすみません。』
「いや、大丈夫。その気持ちだけで十分だ。…それよりも君の安否が最優先だ。これ以上無理して吐き出さなくてもいい。」
『で、でも!っ』
「もちろんヴィランの情報が手に入ったらそれは嬉しい事だが、それと引き換えに君に被害が及ぶのは何より避けるべきことだ。この件については私が塚内くんに話しておくよ。」
ヒーロー活動を断念せざるを得ないほどの状態にまで戦ったばかりだというのに、オールマイトは安心してくれと言わんばかりに笑顔を向けていた。
悔しい。
助けになれなくてひたすら悔しかった。