第11章 逃走と真実【原作編(合宿/神野)】
状況を説明する事ができないまま、息は苦しい。
そういう自分の状態を気にしてか、一旦聴衆はそこまでとなった。
そしてしばらくしてからか、息が戻ったかのように安静を取り戻す。
間違いない。これは何かしらの個性で言えないように口止めされている。
でも、その正体が分からないので、とても怖かった。
(‥‥怖い、)
今までヴィランに会った事がないというわけではない。
でも、それにしても、
今回連れ去ったあの継ぎはぎの人も、
黒いマスクをかぶった人も、
ただ圧倒されるような風格があり、もしあのままあそこにずっと監禁されていたら、どうなっていたか想像するだけで恐ろしい。
もしかしたら自分自身を保てられずに飲み込まれてしまったかもしれない。
それを思うと、単純に恐怖が心を支配していた。
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あの後、体と心の安静のためまた何日間か休む事になり、そうなった際、様々な方から訪問という名で私に会いに来てくれた。
最初はオールマイトからだった。
正直オールマイトと対面で話すのは今回初めてに近い。
すれ違ったり、挨拶する程度には顔を合わせている事はあるが…
「今回はすまなかった。」
『‥‥え?』
「雄英の立場として、君が誘拐された事に気づくのが遅くなってしまい、本当に申し訳ない。」
謝罪の真相は、塚内さんの説明で先に知っていた。
どうやら私が誘拐されている間、合宿訓練でヴィラン襲撃に合い、爆豪くんが連れ去られていたとの事。
そして、雄英はメディア対応と爆豪くん奪還のため、ヒーローを総勢で集めて対応していて、自身の誘拐が発覚するまで時間がかかってしまったらしい。
正直そこに関してまったくもって何も思っていないのだが‥‥
『…オールマイト、顔を上げてください。私は大丈夫ですから、』
「でも、君一人怖い想いをさせてしまったのは事実だ。」
『そんな、私の一人のために頭を下げるのはやめてください。』
いくら大丈夫だと言っても、なかなか顔を上げてくれなかった。しばらくしてから、ゆっくりとオールマイトが顔を上げた。
「君が誘拐された件に関して、安否のために報道は封じられているし、外部に他言無用となっている。何から何まで君に気を遣わせている状況だ。もし困った事があったらいつでも相談してくれるといい。」
オールマイトの目は真剣だった。