第11章 逃走と真実【原作編(合宿/神野)】
紹介…?
というよりも
(無個性って、またバレてる!)
あの継ぎはぎの人が私の事を伝えたのだろうか。
私の知らない所で、情報が拡散されている感覚がして、冷や汗が止まらない。
「なかなか辛い経歴をお持ちのようだね。母に捨てられ、無個性と差別され、そんな中、雄英に入るとは。さぞかし血の滲む想いで努力していたんだねェ。」
『っ?!』
そんな事まで知っているの?!
パニックで頭が真っ白になりそうだ。
「ああ、怖がらないでほしいな。僕は君に助言をしたくて来たんだよ。」
『‥‥‥』
助言、?
「君は個性持ちになる事に興味はないかい?」
私はその言葉に頭が一瞬固まった。
この人は一体何を話そうとしているの?
「僕はね。幸いにも巨大な力を持っていてね。個性を与える事ができる個性も持ち合わせている。」
『こ、せい?』
「だから、もし無個性であることがキツイのであれば、いくらでも手を貸す事ができるのさ。」
個性についての話になり、先程の恐怖の感情から徐々に頭が冴えていく。
そんな、都合のいい事があるわけないと頭でわかっているのに…
「まあ、ヴィランである僕の言葉が疑わしいのも仕方ないと思うけれど、少なくとも君にとって生きやすい世界になるとは思う。僕は優しいから、手助けしてあげたいんだ。」
何もかも都合のいい話。
これは罠だ。
なのに…
分かっているのに、どうして私はその先を聞こうとしているの
駄目だ。体調が悪い影響で、冷静になれない。
『わ、私、は‥‥いら、ないです。』
言葉だけでも拒否しなければと思って発する。
「まあ、君ならそういうかもと思っていたよ。でもさ、君の将来のメリットを考えてみなよ。君が個性持ちになるだけで、家族も喜ぶし、なんなら離れてしまった家族を再び呼び寄せるキッカケになるかもしれない。」
『‥‥!』
言葉をうまく巧みに使っている。
いや、手慣れているという事が正解だろうか。
「まあ、ゆっくり考えなよ。今は体調も良くなさそうで頭の整理ができないだろうし。また会った時に答えを聞こう。」
『‥‥っ!』
「さあ、君の本来いるべき雄英に返してやろう。」
私が返事をするより先に、何かの個性によって意識を奪われていく感覚がした。
=====