第11章 逃走と真実【原作編(合宿/神野)】
※一条視点。
『ゴホ、ゴホッ』
頭が痛い。
急激に体が寒くてしょうがなかった。
水をかぶって放置したから体調が悪くなったのだろうか。頭がボーっとして全然働いてくれない。それどころか、思考もぼやけ始めているような気がした。
(‥‥私は今一体監禁されてどうなっている状況なの?)
監禁場所という事もあって周りを見渡しても、誰もいない空虚な場所だ。何もできない自分に悔しさを感じていた。
‥‥どうして、私は無力なんだろう。
無個性ながらできる事はないだろうかと考えて、雄英に奇跡的に合格して…辛い過去もあったけど、これから前向きに自分の道を進みたいと考えていた。
実際、入ってみれば学ぶ事も多くて、私を受け入れてくれた先生方、校長先生に雄英に入って貰えてよかったと思えるような生徒になれたらいいなと、そう思っていたのに、
(‥‥無個性じゃなかったら、)
その考えが頭に過ってしまう。
私が無個性じゃなくて、個性持ちの人間だったら、少なくともこんな状況にならずに済んだのだろうかと、自分自身を責める事をやめられなかった。
体調がよくないと、ずっとネガティブな事ばっかり考えてしまう。そう思っていた時だった。
トントン
向こうのドアからノック音が聞こえ、急にぼんやりしていた思考が一気に覚める。
(‥‥誰、?)
さっきの継ぎはぎの人…?
扉の音と同時になぜが背筋が凍るような感覚に苛まれた。
『‥‥っ、?!』
まるで男の気迫が空気を支配しているような感覚。
息をすることも許せないようなそんな気持ちにさせられる。
これは一体、何?
恐怖と疑問を抱いたままでいると、
「やぁ。こんにちは。いや、こんばんはかな?」
その人物が顔を出していた。
顔を見た瞬間、私は一瞬言葉を失った。
表情が見えず、黒いマスクで囲っているからだった。
『…ど、どな、た…っ、』
なんとか振り絞って言葉にするけど、言葉にするだけで精一杯で、この場所から逃げたい気持ちにさせられる。
いや、
嫌だ。
怖い。怖い。コワい!
本能的な恐怖が押し寄せてくる。
「ああ、ごめんね。怖がらせるつもりはないんだけど、流石にこれがマスクだと怖がらせてしまうかなァ?」
「荼毘くんから取引という名で紹介を受けてね。無個性である君に少し興味が出てやってきたんだよ。」