第11章 逃走と真実【原作編(合宿/神野)】
「B組の泡瀬さんに協力していただきヴィランの1人に発信機を取りつけました。これがその信号を受信するデバイスです。捜査にお使いください」
「この前相澤くんは君を咄嗟の判断力に欠けると評していた。素晴らしい成長だ!ありがとう八百万少女!」
「級友の危機にこんな形でしか協力できず、悔しいです」
「その気持ちこそ君がヒーローたりうる証しだよ。あとは私たちに任せなさい!」
八百万の発信機、それがあればヴィランの居場所を追跡し、見つけ出す事ができるかもしれない。そう思い至り、俺は切島と共に助けに行く事にした。
ただ、クラスの面々の意見は賛否に分かれていた。
現在ヒーロー免許書を正式に持っていない俺たちにとっては、ヒーローに任せる事が正解なのかもしれない。
でも肝心な時に助ける機会を手放す事は、俺にとってはどうしても納得することはできなかった。
正面切って行動する気はないが、最善にできる事はしておきたい。万が一バレたらその行動の責任は受けるつもりだ。その覚悟で俺は助けに行くために行動する事を選んだ。
俺の目の前にいながら、助けられなかったクラスメイト。
そして、俺の知人であり、これから関わっていきたい人物が、ヴィランに捕まっている可能性を考えると、覚悟を決めるのは一目瞭然だった。
覚悟が決まった夜。
助けに行く事を決めた切島。
中立的な立場で行動する事を選んだ八百万。
切島の問いかけに悩みながら行動する事にした緑谷。
猛烈反対しながらも、ついて行く事を決めた飯田。
今回助けに行くという行動に対して色んな考え方を持ち合わせる面々と共に発信機を通じて列車に乗り込んだ。
「今夜出発とかそういうのみんなに伝えてるの?」
「あぁ。言ったら余計止められたけどな」
「あのあと麗日がダメ押しでキツイこと言ってくれたぜ」
ー爆豪くんきっと…みんなに救けられんの屈辱なんと違うかな…
「一応聞いとく。俺達のやろうとしてることは誰からも認められねぇエゴってやつだ。引き返すならまだ間に合うぞ」
「迷うくらいならそもそも言わねぇ!あいつはヴィランのいいようにされていいタマじゃねぇんだ」
「僕は…後戻りなんて出来ない」
緑谷の目にもう迷いはなかった。