第11章 逃走と真実【原作編(合宿/神野)】
彼の言葉にしばらく沈黙が続く。
ずっと監視されているみたいで緊張が走る。
(‥‥どうしたら、)
恐らくこの状況で助けに来てくれる可能性は零に等しい。
だからこそ、何か行動でも起こしたいけど、考えなしの行動は、彼の個性によって私は一瞬で消し去るだろう。
不安で不安で気持ち悪くなりそうだ。‥‥駄目だ、冷静にならないと、
そんな私の状況に構わず、例の人は淡々と話しを始めた。
「そういえば、お前無個性なんだっけなァ」
え?今、何て言ったの?
『‥‥どうしてそれを知っているんですか』
「そんなの、情報通に聞けばいくらでも手に入れるに決まっているだろ。」
情報通って…ヴィランの世界ではそういうものが存在するの?
とはいえ、どうして私の個人情報がヴィラン側に知れ渡っているの?
「さぞかし大変な思いをしたんだな。まあ、俺にとってはどうでもいいがな。お前を餌にしておびき寄せればいいだけ」
『さっきから一体何の事‥‥』
「お前には関係ねぇ話だ。」
くぐつとか、餌とか…
訳もわからずこの人に殺されるかもしれない状況だから、少なからず状況を把握したかったが、やはりそんな簡単にはいかないか。
「それより、」
『きゃっ、!』
押し倒された状態で、服を軽く掴まれる。何事と思いながら抵抗するが、力の差は歴然としていて、いつの間にか服の襟が無理やり千切られていて、首元に冷たい風が入る。
え‥‥?な、何?
まさか、
‥‥脱がされるの?
『‥‥っ!!!』
「‥‥‥」
『い、嫌だ。やめて、っ』
それは嫌だと思いながら、ジタバタしていると、冷めた目を向けながら私の動きを見つめていた。すると、自然と距離が近づいてきた。首元の方に、
ガブ、
『‥‥っ!?痛っ』
状況が分からず頭がボーっとする。
え、首を噛まれた?どうして、なんで?
痛みで涙が出そうになる。ただ、私のその姿が面白いらしく、仕舞には噛まれた部分を舐められたような感覚がした。
私は驚き過ぎて、思わず頭突きをしていた。幸い強く当たらなかったけど、
『な、何するんですか!!!!』
「さあな、ただの暇つぶし。」
暇つぶし‥‥?え?
困惑が隠しきれなかった。