第11章 逃走と真実【原作編(合宿/神野)】
「おい、」
黙っていたその人が女の子が持っていたネックレスを奪って引きちぎる。
(あ.....)
プレゼントを勝手に壊されて、悔しい思いになるが、今はそれを考えている場合じゃない。
「俺はコイツに用があるから、先に出てろ。」
「え~もっとお話ししたいです。ただでさえここ女の子がいなくて退屈なんですよ、」
「知るか。テメェみたいなイカレ女が人間みたいなこと言うんじゃねぇ。アホな事いってねぇで、早く出ろ」
「荼毘くん、殺さないでくださいよ??トガが先に殺したいんですから」
すごい物騒なことを言って女の子は去って行った。
1対1の状況、彼女が言っていた殺すという言葉。
普段聞き慣れない言葉だが、私は殺されるかもしれない立場にいるということだ。
とても怖い。
全身の震えが止まらない。ただでさえ水をかぶられ体温が下がっているのに、心が折れそうだ。
「っくく、随分萎縮してんな。」
私の様子が楽しいのか、例の人は笑いながらこちらを見下ろす。
いろんなところに火傷の跡が広がっていて見ていて痛々しいその人が私の顎を持ち上げた。
『私をどうするつもりですか』
「お前は俺の目的を成し遂げるための傀儡だ。せいぜい大人しくしてろ」
く、ぐつ?
私は使われる立場にあるってこと?何も価値がない私が?
意味がわからない
「ま、とはいえ、ここでお前を監禁するだけっていうのもつまらねぇし、」
『っ、!』
考える隙を与えられないまま、いつの間にか肩を掴まれてそのまま押し倒された。掴まれた手の力が強く、私の足に自身の体重を乗せて逃げ場をなくしていた。
紐で手首を縛られてるのもあってうまく逃げられない。
「俺を楽しませてくれよ。なぁ?」
その顔は何か狂気じみた笑みに感じとれた。背筋が凍るような感覚だった。
彼の言う「楽しませる」ということがどういう意味なのか、恐ろしくて考えたくない。
今すぐにでもここを離れたい気持ちでいっぱいだった。
いろんな不安が押し寄せる中、一瞬自分の携帯の存在を思い出したが、案の定ポケットの中は空になっていた。
「まあ、そう考えるよなァ?」
彼は私の目の前で携帯を一瞬で粉々にした。
「逃げようと思うもんなら、この携帯みたいにお前も粉砕してやるよ」