第10章 話し合いと繋ぎ【夏祭り】
彼が言った一言一言が理解できずにいた。
ーハッキリとそうなのかはわからねぇけど、この思いが“ホンモノ”なら、俺は、お前の事、好きなのかもしれない。
本物、ホンモノ? それってどういう事?
私の笑顔を近くで見ていたいと彼は言ったけど、その思いがホンモノであればって、って言いたいの?
だから、好きかもしれないって?
『や、やめてよ!そんなのあり得ないよ、』
推測で自分を好きかもしれないと告げられても困る。
だって、今更彼が私を好きになる要素がどこにあるというんだ。
「‥‥あり得ない?」
『そ、そうだよ!私を振った事、忘れたの?』
「‥‥‥‥」
『轟くんが、どういう気持ちの変化があって私にこう接しているのか、分からないけど‥‥きっと、勘違いだよ。私を好きになるなんて、』
「‥‥どうしてだ?」
『どうして、って』
どうしてって、言われても‥‥‥今までそういう素振りを見せたことないじゃないか。だって、想いを引きずってドキドキしている私と比べても轟くんの反応は普通だった。
確かに、おばあちゃんの件で抱きしめられたり、こうして強引に会いに来たのも、そういう“感情”があるからといえば説明がつくけど‥‥でも、
脳は拒否反応を起こしていた。恋愛感情を面倒だと感じていた中学の彼のことを知っているからよりそう思ってしまった。
彼が変化していることは、わかっていたけど‥‥、それは私とは無縁で、関係ないはず、じゃないの?
『‥‥だって、轟くんは、‥‥私と、こ、恋人みたいな事したいわけじゃないでしょ?』
自分で言っていて恥ずかしいから、つい口ごもる。でも、ちゃんとその真意を確認したかった。
「恋人?」
『ほら、‥‥手を、繋いだり、抱き締めたり、そういう事したいって思う?』
「‥‥‥‥」
轟くんは驚きを隠せないと言った顔をしていた。
やっぱり‥‥そうか、
そうだろうと思った。確かに私に“好意”を抱いているかもしれないけれど、私が彼を“好き”なのと、彼が私を“好き”なのは、明確な差がある。
彼の“好き”は、親愛としての部分が大きいのだろう。
確認出来てよかった。
『ほら、ね?轟くんは、私の事好きっていうのは、きっと違-「いや」』
私の言葉を遮りように、彼は否定の言葉を貫いた。