第10章 話し合いと繋ぎ【夏祭り】
轟くんもその話題に触れた事によって、顔つきが少し変わっていた。
「‥‥そう、だな。」
「まずはお前に謝らせてほしい。」
『‥‥‥え?』
「本当に悪かった。」
頭を下げられても思い当たる節が見当たらない。どういう事だろう。
「前会った時も話したかもしれねぇが、俺はお前に呆れてもしょうがないと思ってる。お前の事も忘れていたし、中学の頃はひでぇ態度だったからな。」
『‥‥そ、それは、轟くんのせいじゃ、』
「だから、正直、どんな理由があれ、現段階でお前を引き留められる理由が思い浮かばなかった。」
彼は悔しそうに歯を食いしばっていた。
「でも、このまま会わないで置けば、お前と話す機会がどんどん失われて、お前との関係がなくなる。それだけは嫌だった。」
彼の表情からその部分だけは譲れないと言わんばかりにこちらを見つめていた。
『それは、どうして?幼馴染、だから?』
「‥‥‥‥多分、違う。でも、一つ言えるのは、」
私はその瞳に吸い込まれてしまいそうでとても怖かった。
「俺は、お前の泣いてる姿を見て見ぬふりはしたくねぇし、お前の笑った顔を近くで見たいと思ってる。」
『‥‥え?』
「これは本当だ。」
何も偽りもない。その事実に私は固まってしまった。それはどういう意味に捉えればいいのだろう。
『な、何言ってるの?ダメだよ。そんな事簡単に口にしちゃ‥‥』
「‥‥‥‥」
『轟くん、本当にありがたいんだけど、でも、』
「好きでもない女に期待させるような行動はするな、って言いたいのか?」
『‥‥!』
ー俺はただ日常会話でもなんでもいい。ただお前と関わっていきたいだけだ。それももう駄目なのか?
ー‥‥ダメだよ。
ー‥‥好きでもない女の子に、期待させるような行動しちゃ駄目だよ。
ー‥‥‥気持ちはすごく嬉しいけど、でも、やっぱり、私はもう轟くんに会うつもりはないよ。さっきも言ったけど、これは自分のケジメだから、
そう、私はあの時、そう言った。それを彼は覚えていた。
「‥‥もしかしたら、」
戸惑いが巡る中で、彼はしっかりと私を見つめていた。
「ハッキリとそうなのかはわからねぇけど、この思いが“ホンモノ”なら、」
そんな彼が紡がれる言葉に目が離せなかった。
「俺は、お前の事、好きなのかもしれない。」
私は夢の中にでもいるのだろうか。