第10章 話し合いと繋ぎ【夏祭り】
彼への善意を素直に受け止められない自分が悪いのだろうかと、罪悪感が芽生える頃、彼は私をゆっくりとベンチに座らせた。
よく見たら、周りは神社の近くの公園だった。静かで誰もいない。
『‥‥ありがとう。‥‥あの?』
「草履、一旦脱がすぞ。」
彼は今なんて?って頭がハテナになる中、彼は私の足に合わせて背を低くし、ゆっくり草履を脱がす。
思いのほか親指の傷口が酷くなっていた。
「‥‥タオルか、ハンカチとかあるか?」
『あ、あるけど‥‥』
「カバン借りるぞ。」
すごいテキパキと進めている彼の思考に追いついていけないまま、じっと彼を見るしかなかった。
「‥‥二枚あるな。『あ!』
そっか、さっき心操くんが涙を拭く用で貸してくれたハンカチも入っていたんだった。流石にそれを使うわけにはいかない。
『く、黒いハンカチは使わないで!私のじゃないから、』
「そうなのか?」
『えっと、それは心操くんに借りたもので…』
「‥‥心操、」
一瞬間が空いた。さっきまで進んでいたのに、急にどうしたのだろう。しかし何事もないかのように行動し続ける。
「水に濡らして来る。」
彼は近くの水道水に水を付けて私に駆け寄ってきた。
「足、触るぞ。」
『い、いや!あの、自分でするからっ、』
「浴衣の体制でするの無理だろ。」
『で、でも!』
「悪い。すぐ終わるから耐えてくれ。」
そう言って足首を左手で支え、右手は先ほどの濡らしたハンカチで傷口に優しく触れていく。私の足に触れる度に心臓が落ち着かない。
(‥‥ダメなのに)
今この状況がとても申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
ここまでしてもらっているのもそうだし、気持ちが揺らいでしまう曖昧な自分自身も許せなかった。
「悪い。痛かったか?」
『ううん、そんな事ない、よ』
彼はその後は何も言わずに傷口を水で綺麗にし、ポケットにある絆創膏を貼ってくれた。
『手際がいいんだね。』
「授業でよく災害救助の訓練してるからな。」
『…ありがとう。』
彼に感謝を伝えた後、しばらく無言が続いた。さっきまでお姫様抱っこされたり、足の傷口を濯いでもらったりと、慌ただしかったのが嘘みたいだ。
少し落ち着くと、私は口を開いた。
『今日、話し合いって、事だったけど‥‥、』