第10章 話し合いと繋ぎ【夏祭り】
※一条視点
轟くんがこの場所にいる。
しかも、私を探している。その事実に驚いていた。
「どうしたの?」
『あ‥‥えっと、』
心操くんが私の様子に気づき、何があったのか目配せをしていた。答えに迷っていると、またSNSアプリの音が聞こえた。
ーどうする?マジで無理とかなら、今日このまま解散しちゃっていいと思うし、対策考えるけど…私が言い訳考えるしさ。
「‥‥轟、いるの?」
『あ、』
まさか本人から自分に接触しようとしているなんて思っていなかった。私は私で気持ちの整理のためにも意図的に彼に会わないようにしていたけれど…それが逆に悪かったのだろうか。
いや、でも‥‥
どうすればいいのだろう。
「まあ、一条がどうすればいいか決めればいいよ。嫌なら嫌でいいと思うし、」
『心操くん…』
逃げる事もできる。理央ちゃんもそう言ってくれた。その選択がいいんだろうと…
ただ、流石にこれ以上私の件で気を遣ってもらうのは申し訳なかった。
それに、連絡手段を断たれた中で、こういう隙間で会おうとする轟くんの行動に今まで以上の強引さが見え隠れしていた。
直感にすぎない。これは勝手な自分の憶測でしかないけれど、ここで会わないといけないような気がした。
(‥‥できれば会わないでおきたかったけど)
自分も言いたい事を言って逃げてしまった身だ。
もう一回話してみるしか方法がなさそうだった。
だから‥‥‥
――――――
「心操!沙耶!」
向こう側から理央ちゃんの声が聞こえてきた。
「‥‥どうやってわかったんだ?」
「ちょ、失礼ね。私、共感覚持ちだってば、すぐわかるってーの」(※彼女は「共感覚」という個性持ちで、他人の感情を色で判別できます)
『おかえり。』
「まあね。‥‥えっと、その、それでなんだけど、」
理央ちゃんの後ろについてきた轟くんを見て内心ドキッとする。真正面で彼の顔を見る事が逃げたい衝動を掻き立てられた。
『…と、轟くん』
「久しぶりだな。」
彼の表情は真剣そのものだった。でも声のトーンはどこか安心しているようにも見えた。
彼は何を求めるつもりなんだろうか。それを話さないといけない。
緊張と焦りと不安が混じって喉を詰まらした。