第10章 話し合いと繋ぎ【夏祭り】
俺は詳しい事情を八百万に話した。
「‥‥一条さん?あ、もしかしてこないだお会いした方?」
『ああ、見かけたらでいいが、教えてほしい。』
「わかりましたわ。…それにしても、」
急にニコリと笑みを浮かべていた。
「轟さんは、一条さんの事、とても大切にしていらっしゃるのですね。」
大切、というキーワード。嘘ではないが、他人からはそう映るのか。
「一条さんと何があったのか知りませんが、仲直りできるといいですわね。」
『…そうだといいがな、』
正直、俺の本音を伝えた所で、アイツが応答してくれる確証はない。むしろ煙たがれる可能性の方が高いが…それは今話さなくてもいいだろう。
とりあえず、もし見つけたら連絡してほしいとだけ伝え、その後、八百万とは解散した。
当たりを見ながら回っているが、この中でアイツを探し当てるのは難しいと判断していた頃、集中的に人が多くなっているのを感じた。
どうやらもうすぐ花火が始まるみたいで、案の定花火の音が盛大に大きく囲っていた。
その派手さに思わず視線が空に向いた。
今頃、アイツもこの花火を見ているのだろうか、他の人たちと一緒に楽しんでいるのだろうか。
(‥‥‥対する俺は、)
明らかに違う表情を向けるだろうなと予想が付き、複雑な感情を抱いた。
(やばいな)
どうやら思ってた以上に自分は焦っているみたいだ。
この感情を解決するためにも、早く会って話しがしたい。
そう思いながら進もうとすると、先ほどの人混みが少しずつ減っていくのを感じた。それと共に膨大な花火の音も消えていた。
いつの間にか終わっていただなんて思わなかった。
(‥‥早く、しないとな)
焦りがじわじわと広がっていく最中、だった。
「…あ~沙耶?」
この声は前に聞いた事がある。そう思い、俺はその声の主を探す。
「今どこ?ああ、あの場所ね。私、さっきはぐれた所の中心にいるから来て。」
やはり、一条はここにいるんだな。
核心を得て、つい声をかけた。
「‥‥一条、いるのか?」
『え?…は!?轟?!』
「もしよかったら、アイツの居場所を教えてくれ。」
ただただ必死にそう伝えた。今はひたすらに会える可能性を模索するしか俺にはなかった。