第10章 話し合いと繋ぎ【夏祭り】
静かな奥の場所から離れて、先ほどの縁日で賑わっていた場所に戻った。ふと隣を振り返っていた。移動の時から、何やら考えこんでいる様子だったけど、どうしたんだろう。
『……心操くん?』
「もし、俺が‥‥」
『‥‥?』
「いや、‥‥なんでもない。」
黙り込んでしまった。‥‥もしかして呆れてしまったんだろうか…そう思われたら少し怖いけど、
~♪
突然のSNSアプリの音が聞こえて、開いてみる。理央ちゃんの長文らしき内容が目に入って来た。
(何か、あったのかな)
ー大変言いづらいんだけどさ。
ーちょっと近くでアンタの知り合いの轟に会っちゃって…どうしてもアンタに会いたいらしくて教えてほしいって聞かれてるんだけど、‥‥会いたい?
‥‥え?
轟くんがいる?
その事実に一瞬頭が固まった。
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※轟視点
緑谷に感謝を伝えた後、色々考えた末に、やはり自分は彼女と実際会って話したいというのが結論だった。正直、また目線を逸らされる可能性がある。逃げられる可能性もある。それでも、もう迷ってる場合じゃない。
そう思って、アイツのクラスへ向かった。
「そういえば、今度の縁日行く?」
「あ~そういえば今日からだっけ?」
「ここから近いし、帰りがけによって行こうぜ」
歩いている際に、周りから「縁日」に関する話が聞こえてきた。そういえば、町内会の掲示板にそのような内容のポスターを見かけたような気がする。
「縁日」というと、家族や友人、そういうのに恵まれている人たちがよく行く祭りという印象がある。正直自分は祭りが好きでも嫌いでもどっちでもないけれど、
「~~~♪」
偶然にもチラシを持ちながら鼻歌を歌う女子生徒が1年C組へ進む姿が目に入った。
あのチラシは掲示板に乗っている「縁日」のポスターと同じだった。それに確か、一条といつも一緒にいる奴だったはずだ。
(‥‥もしかしたら、)
アイツも来るんじゃないかという期待できない安直な考えが過った。
「浴衣持ってる?」
「.....ないかも」
「じゃあせっかくだし買えば?最近だと安めにレンタルとかもできるし、」
「よし、じゃあ明日待ち合わせね。」
ドアの隙間から縁日の話をしている会話が聞こえてきた。まさかその通りになるとは思っていなかった。