第10章 話し合いと繋ぎ【夏祭り】
情けない。なんで泣いているんだろう。
もう会わないと決めたのも自分なのに、どうして体は言う事を聞いてくれないんだろう。
「え、俺、何かしたか?ご、ごめん。」
『ち、違うの。勝手に涙が‥‥』
私の泣いてる様子に少し慌てている彼に、大丈夫だと伝えた。でも、ハンカチはとりあえず使えと、彼に言われてしまった。
「とりあえず、落ち着くまで使って。」
『あり、がとう。』
自分もハンカチ持ってるのになんか申し訳ない気分だった。花火の音が聞こえて来る中、私は独り言のように呟いていた。
『はやく、忘れたいな。』
「‥‥‥‥‥‥」
『そうなったら、いいのに、な。』
色々と思う所はあるけど、早く涙を仕舞わないと、せっかくの縁日が台無しになってしまうだろう。ただでさえ、心操くんには先ほどの男性の件で付き合わせてしまっているんだから。
私はその一心で心を落ち着かせて、少しずつ冷静になった。涙も落ち着いてくれたみたいだ。
「‥‥‥轟の事、」
『?』
「まだ、好きなの?」
恐らく私が急に涙を流した事への質問だろうか‥‥心配をかけてしまったみたいだ。
『ごめんね。私も、こうなると思ってなくて、』
「いや、それはいいけど、」
『‥‥情けないよね。気持ち切り替えないといけないのに、』
「別に無理しなくもいいんじゃないの?」
『ありがとう。でも、流石に、ね。』
振られたのだって1年以上前なのに、この有様だ。このままだとずっと引きずるのは目に見えていた。だから無理をしてでも彼と関わらないようにしないといけないのだ。
『急に、困らせてごめんね。』
「‥‥‥いや、」
気づけば、花火の音もなくなり辺りが静かになっていった。
ブーッ。
携帯の振動が伝わってくる。どうやら花火も一段落して、沙耶ちゃんがどこにいるのか確認しにきたみたいだ。
『本当にごめんね。楽しんでいたのに、』
「それより、そろそろ移動するか?」
『そう、だね。ありがとう。ハンカチ、ちゃんと洗って返すね。』
個人的な感情に巻き込んでしまった心操くんに申し訳ないといつも以上に思ってしまい、つい口に出してしまう。彼はその意図を察したのか私が困らないように普段通り接してくれた。
ただ、
移動する際に、何やら考えこんでいる様子だったのが少し気になっていた。