第10章 話し合いと繋ぎ【夏祭り】
「花火も大詰めなんじゃない」
『…あ』
花火が一瞬にして爆音が響き渡る。たくさんの綺麗な光景の中、手がずっと握られたままであることに気づいた。
私の視線に気づいたのか、心操くんから手を解いた。
「ごめん。人混みから離れたら危ないと思って」
『うん。大丈夫』
彼の意図はわかっているつもりだったから、特にそれに対して何も言わなかった。
『‥‥‥今日は本当にありがとう。』
「まあ、俺もそこそこ楽しめたよ。」
『心操くんも最近忙しかったもんね』
こないだ保健室で会った時も、面接があったみたいだし、彼も彼なりに楽しんでくれたら嬉しい。
「足、大丈夫?」
『まだちょっと痛いけど、大丈夫だよ』
「それ大丈夫じゃないだろ」
彼は若干呆れてしまった表情をしながら、また花火を見つめ直した。
しばらく沈黙の中、彼から口を開いた。
「‥‥ずっと、気になってたんだけど、」
『‥‥?』
「轟のこと好きなの?」
『‥‥え?』
理央ちゃんといい、心操くんといい、何も言ってないのにどうして気づかれてしまうのだろう。
「なんとなく、そうなんじゃないかって思っただけだけど、」
『‥‥‥そんなに、分かりやすかったかな。』
「まあね。」
『うっ、‥‥‥じ、自重します‥‥』
「別にいいんじゃないの?」
『‥‥ううん。やっぱり駄目なんだ。』
「なんで?」
『‥‥‥振られちゃってるから、』
私の返事に一瞬間が空いたかと思ったら、彼は申し訳なさそうに「ごめん」と小さな声が聞こえた。
「それで最近体調悪かったのか、」
『あ‥‥、総合的に、ね。』
期末試験後に仮眠しようと向かった保健室で彼に会った時の事を言っているのだろう。まあ彼だけの問題ではなく、家族の件だったり色々疲労の原因はあるが…
『で、でも、今日気分転換に遊べてよかったよ!』
「‥‥‥そう、」
『あ、そ、そんなに気遣ってもらわなくてもいいから!振られたのだって大分前の話だし‥‥』
自分に言い聞かせるような空元気。これ以上何も考えたくなかった。それに釣られてか、心操くんの顔はなんとも言えない表情でこちらを見ていた。
しばらくした後、彼の発した言葉は、
「‥‥‥大丈夫か?」
その優しさに触れて、ちゃんと答えようと口を開けようとしていたのに、
『‥‥あ、』
気づいたら涙が出ていた。