第10章 話し合いと繋ぎ【夏祭り】
「‥‥そろそろ、時間ね。」
『え、何が?』
「花火よ、花火!もうすぐ見れるんじゃない?」
花火‥‥か、
実際そんなに見た経験がないので、少しワクワクした。
「楽しい?」
『‥‥え?』
すごいニコニコした顔でそう聞かれた。
『うん、‥‥そう、かも』
正直楽しむっていう事に対して遠慮している部分があるし、今もまだその気持ちは消えないけど‥‥でも、今は楽しみたいと思っている。
「よかったわ」
理央ちゃんは安心した様子だった。
「…最近アンタ大分参ってるみたいだったからさ、その言葉が聞けてよかったわ」
『‥‥理央ちゃん、』
「生きてたら辛い事もあるだろうけど、楽しい事もたくさんあるんだからさ、そうやって笑っていた方がいいよ。」
理央ちゃんには話している部分もあるし、話してない部分もあるけど、でも浮かない自分を察してこうやって提示してくれたのはありがたかった。
「それよりも、始まるみたいだけど」
私たちの話を横目に、心操くんが空を指さしていた。少しずつ花火の爆音が耳に残り始める。
綺麗な色合いの花火が夜空を舞っていた。
「あーいいね。今回の祭りはだいぶ豪華ね」
『綺麗‥‥だね。」
「‥‥花火なんだから、そういうもんでしょ。」
じっくりと眺めていた時だった。徐々に人混みが多くなっていた。
「あ、ちょ、」
『ひ、人混みが…』
人混みになるペースが早すぎて、目が追い付かない。そして、いつの間にか人混みに流され始めていた。理央ちゃんが隣にいたはずなのに、距離が離れていく。
「心操、フォローお願いね!」
『‥‥り、理央ちゃん!』
「私はいいからっ!花火楽しみなよ!後で電話するから!」
大声でそう伝える理央ちゃんは笑顔だった・
「一条、こっち」
『‥‥あ、』
心操くんの手に導かれ、人混みから離れるために試行錯誤動き始めた。
数分後、ようやく落ち着ける所までたどり着いた。
「ここまで来れば大丈夫だと思うけど、」
『‥‥あ、ありがとう。』
「足、無理しない方がいいから」
改めてたどり着いた静かな場所で、花火を見始めた。
『色々付き合ってもらっちゃって、ごめん』
「‥‥別にいい。さっきの事もあったし、」
『うん。あ、手握って貰っちゃってありがとう。今離す、』
ドン!
瞬間更に大きな花火の音が聞こえた。