第10章 話し合いと繋ぎ【夏祭り】
「沙耶!ごめん遅くなったわ!結構並んでて…って、どうしたの!?」
遠くから理央ちゃんの声と、走ってこちらへやってくる様子がわかった。私の雰囲気的に何があったのかを察知したのだろう。
『し、心操くんが助けてくれたんだ。えっと、』
どう説明すればいいんだろうと考えた際に、心操くんが口を開いてくれた。
「変な奴が一条を連れ出そうとしていたのを見かけて、追い払った。」
「え、マジで!?怪我してない?」
『‥‥だ、大丈夫』
「ていうか、女子を一人にさせるなよ。危ないだろ。」
心操くんはあくまで淡々と話してくれている。よかった、おかげで雰囲気が重くならずに済む。
「ていうか、沙耶、草履があっちこっちになってるし、親指に血がついてるじゃん‥‥今日はもう無理はしない方がいいんじゃないの?」
『え、』
草履が足から抜け落ちてしまった事を今更気づいた。
『だ、大丈夫だよ!せっかく来たんだし‥‥』
「本当に大丈夫なの?無理しなくても‥‥」
『大丈夫!』
心配でそう言ってくれたんだろうけど、このまま帰ったら、さっきの事を思い出しそうだし、せっかくの思い出が楽しいものじゃなくなってしまう。
「じゃ、わかった。でも、その足じゃあまり無理するのもよくないから、ゆっくり行くって事で‥‥心操、アンタも一緒に回って」
「‥‥は?」
「女子1人じゃ危ないって言ったのアンタでしょ、さっきの事がまた起きるかわからないし、男子がいた方がこの子も心強いだろうし」
『‥‥え、でも』
心操くんがこの後用事があるかもしれないのに、私のせいでつき合わせるなんて、それはちょっと申し訳ない。
「‥‥用事もないからいいけど、」
『い、いいの?』
「まあ、いいよ」
まさか了解を得るなんて思わなかった。
「よし、じゃあ屋台回るよ!足元ゆっくりね。」
「‥‥‥‥」
私は二人に導かれて夏祭りの屋台を周った。
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屋台巡りは楽しかった。
りんご飴も食べたり、焼きそばを食べたり、水風船で遊んだり、あまり経験した事のないことが多くて、困惑しながらも、こういうものなんだと雰囲気を楽しめた。
理央ちゃんを先頭に、心操くんはやれやれと気だるげに一緒についてきてくれた。
二人のおかげでさっきの出来事を忘れるぐらいだった。