第10章 話し合いと繋ぎ【夏祭り】
次の日はすぐに訪れた。
おばあちゃんに報告しようと思っていたが、時間があまりなく軽い伝言を看護師の方にお願いした。
祖母の状態があまり良くないのに、自分が遊んでもいいのかっていう罪悪感がふとした時にやはり訪れる。簡単には拭いきれなかった。
でも、このまま家族の事や、轟くんの事で不安に駆られてもいい事はないし、これを期に少し肩の力が抜けられたらいいなと思いたかった。
(‥‥考えない、考えない)
リラックスしていこう。
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私は紹介してもらった美容院で軽く髪のセットと顔のお化粧までしてもらえた。浴衣も理央ちゃんが私について事前に店の方へ伝えていたらしく、おすすめの浴衣を軽く紹介してもらい、着付けまでしていただいた。
かなりの時間をかけてセットをしてくれて、むしろ申し訳ない気持ちだが、その分鏡に映った私はいつもの自分とは別人みたいに映っていた。
(…変な、感じ)
髪も今までにしたことのないセットだ。確かギブソンタックというヘアスタイルみたいだ。そして、浴衣は王道の薄ピンクの花柄と薄紫の色合いをしている。
私はこういうのには疎いので、ほぼお任せみたいになってしまったが、普段の高校生は自分で考えてお化粧もしているのだと思うと、とても凄いように思えた。‥‥自分も高校生だけど
(‥‥似合う、かな)
スタイリストさんや美容師の方が満足していらっしゃるのを見ると、大丈夫、なんだよね?
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夕方頃、神社の前で待ち合わせをしていた理央ちゃんと出会った。彼女も同じく浴衣を着ている。
「あーいいじゃん似合ってる!」
『あ、ありがとう。理央ちゃんも、綺麗だね。』
「私は適当適当。さ、早くいこ。」
私の着付けやスタイリングに満足気な様子で、立ち話する事もなくすぐ縁日の場所まで向かった。
人混みがすごい‥‥なんだかこういう雰囲気の場所に自分がいるのが照れくさい。
「アンタは何食べるの?」
『え?‥‥どうしよう、かな』
「…よっし、私は焼きそば食べるわ。ちょっとそこで待ってて」
『あっ、一緒に行くよ。』
「アンタはまだ考えてる最中でしょ?私に構って一緒に列並ぶと脚疲れちゃうし、そこのベンチで座ってなさいよ。」
『‥‥あ、』
あっという間に屋台の方へ向かってしまった彼女の背中を見つめていた。
