第9章 好意と本音【期末試験】
「あ~‥‥」
案の定、私の発言によって気まずい空気が漂う。A組の方々は互いを見つめ合いながら、眉が八の字に下がっていた。
とても申し訳なかった。決して彼女彼らが悪いわけではないのに、
すると少し間を置いて、黒髪の女の子が声をかけた。
「なんか、色々ごめん。勝手にこっちが盛り上がっちゃって」
『あ…いえ、こちらこそ、』
「ごめんな~轟、お前にも謝らないとな。」
「申し訳ありません。わたくしも迂闊でしたわ。」
『あ、いや、!そんなに謝らなくても…』
思わぬ以上に深刻に申し訳ないという表情をしていて、何とも言えない気持ちだ。
そんな中、轟くんは‥‥
「……なん、だよ、」
独り言で何かを呟くと、目つきに皴を寄せていた。この状況があまり良く思わなかったようだ。なんでそうなのか、今の私が知る由もない。
…‥知らなくてもいいことは追及するべきではない。
体育祭でそれを肌で思い知っている身としては、丁度いい。ここで抜けるべきだろう。これ以上、私がここにいても、A組と仲がいい轟くんの邪魔になるだけだし‥‥
『用事ももう終わったので、私はこれで…』
「‥‥一条、」
そうここを切り抜けようとしたとき、それを阻止するように轟くんの手が私の手首を握って離さない。彼の視線は真っ直ぐ私に向かって苦い顔をしていた。
「‥‥まだ、俺は話終わってねぇ。」
『‥‥‥‥私はもう終わったよ。』
早く離してほしい。そう思った私の願いが届いたのか、彼はしぶしぶ手の力を緩めてくれた。
納得いってないような顔。
そんな顔されても私はこれで終わりにすると決めたから、許してほしい。
『‥‥それじゃ、‥‥元気でね。』
私はお辞儀をして、逃げるようにその場から離れた。
彼がどんな顔をしていたのかわからないまま、
家に帰ってきた途端、先ほどの疲れの反動か、ベッドにうつ伏せになっていた。
これでよかったんだ。
これで私は未練を振り切れるし、轟くんも過去の私に構わずヒーローの卵として真っ直ぐ進んでいける。
そのはずなのに、
『…‥はぁ、っは、』
気持ち悪くて吐きそうだった。結局私は話をしたつもりになって最後は「逃げる」という卑怯な手を取ってしまった。
私はそんな自分が大嫌いだ。