第9章 好意と本音【期末試験】
※轟視点
俺はどうすればよかったんだろうか、
彼女の去る瞬間を見ながら、俺を心配してか声をかけてくれた。
「‥‥なんか喧嘩中なの?」
「上鳴うるさいっ、」
「‥‥轟さん、何かあったんですか?」
偶然出くわせた彼らには申し訳ない気持ちだ。ただ、俺自身この状況をうまく説明できるほど気持ちの余裕はなかった。
『‥‥いや、わりぃ、俺も先に帰る。』
俺は軽く会釈をし、その場を去った。
ー‥‥ごめんなさい。轟くんとは昔の知り合いってだけで、それ以上でもそれ以下でもないんです。
俺より先に彼女の方から返答していたあの言葉、
本当に俺との関係を断つつもりなのか、その言葉は淡々としていた。
『……なん、だよ、』
元々考えていた事だったのかもしれない。でも俺にとっては突然そう言われて納得しろと言い渡されたようなものだ。何も納得できないまま事態が進んでいる事にむず痒さを感じた。
「用事ももう終わったので、私はこれで…」
『‥‥一条、』
一条はこれでもういいと言わんばかりにこの場を離れようとしているのを見て、そんな彼女をなんとか止めたい一心で声をかけた。
『‥‥まだ、俺は話終わってねぇ。』
「‥‥‥‥私はもう終わったよ。」
でもいざ何をしようにも、引き留める言葉が見つからなかった。お前と関わっていきたいと願っても、結局それがお前を苦しめるなら意味がない。
それに、俺自身彼女に何かを言える立場ではない。
ずっと、ずっと俺は彼女との大事な思い出を忘れていた。
ーだってわたしをたすけた時のしょうとくんは、ほんもののヒーローだったもん
ー‥‥私のこと覚えてるかな?…あの時は、ごめんね、
ーいいの。知ってたし...伝えたかっただけなの
幼い頃、俺の事を励まして勇気をくれた言葉を忘れ、中学の頃再会した時、彼女の気持ちに答えず振った。
雄英で再開した時も彼女に素っ気ない態度を取っていた事実がある。
彼女は俺の事をずっと忘れないでいてくれたのに、‥‥好意を抱いてくれたのに、
彼女に対して酷い対応をした俺が、彼女の決断についてとやかく言う事はできないだろう。
だからこそ、強引にも彼女を引き留められないのが悔しかった。
『…‥くそっ、』
無意識に唇を噛み、右拳を強く握りしめた。