第9章 好意と本音【期末試験】
帰り道、
私の隣には轟くんがいて、一緒に歩いている。その光景があまりに久しぶり過ぎて他人事のように感じるくらいだった。
「‥‥‥‥」
『‥‥‥‥』
会話がないまま歩いていく。
ちらっと見る彼の横顔を見ると、より一層凛々しくなった面持ちだった。期末試験後に彼を見た時も思ったけど、自分と会わない間もどんどん彼は自分の夢に向かって進んでいるのが手に取るように分かった。
私の心中を察したのか分からないが、彼の方から口を開いた。
「疲れてるのか?」
『あ…、忙しかったから、かな、それほどでもないよ。』
「そんなわけねぇだろ。」
『あはは、』
我ながら下手な嘘だと思いながら、必死で笑っていると彼はスッと私の目元に触れようとしていた。
「隈、ひどいな、」
『‥‥あ、』
そう言いながら彼が私の目元に触れた時、思わず思考が固まっていた。
彼にとっては何気ない行動だったのかもしれない。でも、その手があまりに優しくて、気持ちが揺れ動く。
それこそ、前に病院で抱き締めてくれたかのように、彼が私に好意を寄せてるんではないか、と、
だから、
『や、やめて!』
思わず、彼の手を振り払ってしまった。また甘えそうになってしまう自分が嫌だったから、
「…‥!」
『あ、っご、ごめん、びっくりして‥‥』
とはいえ、手を振り解いてしまったのは良くなかった。彼も驚いて珍しく目を開いている。
(‥‥悪い事しちゃった、)
自分の本能がそう動いてしまったとはいえ、彼にとっては申し訳ないことをした。
『心配してくれてありがとう。でも、そこまでしなくていいから‥‥』
「‥‥‥‥‥」
彼は何を思ったんだろう。しばらくして彼は口を開いた。
「…‥こうされるのは、迷惑か?」
『!』
「…‥お前が俺の視線を避けてたのも、それが関係してんだろ。」
『‥‥え、っ』
そう言われて思わずハッとした。そこまで私は分かりやすかったのだろうか。
「好き」という感情が溢れてしまうが故に、彼と距離を置きたいという感情が先行している弊害がきているんだろう。
幸せなあの夢を見たからこそ、より一層、
『‥‥ごめん、ね。』
私はただ、謝るしかなかった。私の気持ちに巻き込んでしまった事を、