第9章 好意と本音【期末試験】

「‥‥答えになってねぇよ。理由があるんだろ。」

　轟くんは、突如謝った私の行動に困惑しているようだった。怒っているわけではないが、ただ私の答えを待っているようだった。

　その瞳は有無を言わせない程に真っ直ぐ自分を見つめていた。


(‥‥轟くんは、いつもそうだったね。)


　自分が成したいもののためなら、迷う事なく進んでいく。そういう自分にはない部分に憧れて、‥‥好きになったんだと思う。私が一方的に、


(‥‥きっと、この先言えば、ハッキリする。)


　これから先、彼が私にそういう感情を向けられる事がないと分かっていても、ハッキリとしないこの関係が続く限り、ずっと彼の優しさに挟まれながら、苦しい気持ちになっていくだろう。

　だからこそ、「もう会わない」ことを伝えると決めたわけだ。


(‥‥ちゃんと伝えてすべて終わりにしたいな。)


　多分今がその時なのだろう。私は覚悟を持って、深く息を吐き、轟くんの正面に立った。


『‥‥あの、ね。』


　私は恐れ恐れ、本音をこぼした。


『こうやって、優しくしてもらえるのが、辛いの。』
　

　最初に発した言葉は、正直な自分の気持ちだった。どんな顔していたかは自分ではわからなかった。


『だって、私、まだ、轟くんの事、…‥好きだから。』


　彼との関係を終わりにするには、私一人だけの気持ちで終わりにすることはできない。彼にも私の旨を知ってもらう必要がある。

　そのためには現状の気持ちをはっきりと伝えないと意味がなかった。言いたくない本音さえも、

　
「‥‥俺は、」

　
　私の言葉に、彼は何か言いたげではあったが、うまく言葉が出てこないようだった。当然と言えば当然かもしれない。突然こう言われてすぐ言い返す人はいないだろう。

　言葉に詰まる彼に代わって話を続けた。
　

『‥‥さっきの事もね、迷惑じゃないけど…‥困っちゃうっていうか、まだ気持ちの整理が出来てなくて、』
「‥‥どう言う意味だ。」
『…‥』

　この先を言わなければならないのか一瞬迷った。

　でもここまで来たら、もう全てを吐き出すしかない。


『…‥轟くんの事を諦める整理。』
「…‥！」
『‥‥私は、轟くんを好きでいる事を諦めたいの』


　はっきりとそう言ってしまった。

　もう戻ることはできないだろう。