第9章 好意と本音【期末試験】
…‥ここは?
さっきまで眠っていたはずなのに、
あ‥‥
「おとうさん!」
笑顔で食卓にいる二人と、その中に自分がいる事に気づいた。かつて自分が幼い頃、個性が発生していない頃の小さい私がその人を呼んでいたのだ。
「おかあさん!」
今じゃもううまく思い出せない、母の姿があった。笑顔で食卓に座る二人を見ながら、思い出す。
まだ家族でいられた頃の幸せを、
(…‥どうして、今、)
私は何を見せられているんだろう。
その光景をただ傍観者として見つめる。
(…‥あ、)
場面が切り替わり、今度は幼稚園の頃の自分。たくさんの人込みの中、小さな男の子を見つける。
「沙耶ちゃん、」
『焦凍くん、』
小さい頃の轟くんがそこにいた。
『焦凍くんは、私のこと好き?』
「‥‥え?」
(…‥何いってるんだろう、)
急に小さい頃の私がそんな事言っていてビックリしてしまった。思わず止めに入ろうとしたが、
「‥‥うん。すき、だよ。」
戸惑いながら小さい頃の轟くんがそう答えた。そして、その返事に素直に喜んでいる私の姿があった。
『やった!私もね。焦凍くんのこと大好きだよ!』
「‥‥うん。」
(‥‥‥‥‥)
二人の空間が暖かく包み込んでいく。その中で、しみじみと小さい頃の轟くんが微笑んでいた。
「僕も、沙耶ちゃんのこと、大好きだよ。」
柔らかい微笑み、まるで最初の頃のあの時のようだった。でも、
(…‥こんなこと、って)
自分の記憶にないはずなのに、と、思った。でも、だからこそ、自分の夢の中なんだと改めて実感した。
(…‥もしかしたら、これは願望なのかな、)
そう思うと納得できる部分もあった。夢は自分の願望を表すものだと聞いたことがある。
ならば、この家族の一場面、轟くんとの会話も‥‥すべて…
「‥‥お姉さん、」
(…‥え、)
そう思い悩んでいると、小さい頃の私が消え、ただの傍観者であった私に声をかけてきた。
『‥‥え、な、なに?』
「‥‥一緒にいて、ずっと、」
小さい手が私の手に触れ、まるで懇願するような言葉に思わず戸惑ってしまった。